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解放目録 サンプル
■ 4

どうしてそう言う反応だけはしてしまうのかと、自分の身体を恨めしく思う。
だが晒された喉元へ男が唇を寄せた瞬間、意識はまたそちらへ奪われた。

「…っ、は……っん…ぅ……」
「マウロ」

首筋を柔らかな唇がつたう。
合間から突き出た舌が皮膚を濡らし、薄い場所をキツく吸い上げる。
次いで相手の上体を木へ押し付けるようにして、茶色いシャツへ頭を突っ込んだバジリオは、胸の粒を口に含んだ。

「っあ……、っ…く……」

唇で挟み際立たせた乳首の先端を舌がペロペロと舐める。
その度に背筋を駆け上がる寒気に似た快感に翻弄され、マウロは荒い息を散らせた。

「はっ…ぁ……、や…め……ん、ぅうっ………あ、あぁっ!」
「やっぱり直接の方が、全然良いよね」

いつの間にかズボンの前も緩められ、マウロ自身を取り出されていた。
サッと冷たい空気が触れる感触。だがそれも刹那。
すぐにバジリオの手に握られ、灼けるような熱さに包まれた。

「ほら、まずは先にイッときなよ」
「よせっ! ……っん、…はぁ……あ、ぁ……」
「ここ、弱いよね、マウロ」
「ああぁっ!」

木に寄り掛かる力も無くし、ずるずると背がずり落ちる。
それでも男の手はそこから離れず。
同じように座り込みながら、一秒も相手を休ませない。
じゅぶじゅぶといやらしい水音を鳴らし、先走りの雫を全体へ塗り広げながら、器用な指が早くイケと急かす。
こうなれば本人の意思が介入する隙は全く無い。

「嫌だっ……、っ…あ…あ……、あっ……」
「でも口だけだよね。ちっとも抵抗しないし」
「それは……っん、……お前が暗示をっ……は、ぁ……ぅっ……」
「だから本当に動きたければ動けるよ」

そう言いながら、バジリオは扱く手を強める。
無防備に両手を脇に投げ出し、男の手を受け入れているマウロの姿に目を細め、薄く開きっぱなしの唇へ口付けた。

「ぅん……っん、ん……」

当たり前のように舌を差し入れ、舌同士を擦り合わせる。
唾液が絡む水音。
下肢を思い出させるそれに、なんとなく上下の動きを連動させてみたりして。
すると、繋がる口から熱い吐息が溢れ、隙間から唾液が零れた。
舌さえも暗示にかかって動けないのだろう。
いつも彼のものから逃げをうつ動きもせず、身を委ねているようだ。
噛まれる心配も無いと来れば、じっくり堪能する貴重な機会。
バジリオは口腔の隅から隅まで舌を這わせ、マウロが達するまで嬲り続けた。


顔を離すと同時、二人の唇をねっとりと唾液の糸が繋ぐ。
途中で切れた儚いそれは、マウロの口端から垂れ落ち、喉をも汚した。

「あぁ、良い事を思い付いた。マウロ、実験に協力してくれよ」
「……っ、…あ……な、にを……?」

中途半端に衣服を乱され、木の下で踞る男は、絶頂の余韻に息を乱したまま、潤む双眸をゆるりと上げた。
その顔の前に差し出されるバジリオの手。
パチン。
親指と中指が打ち合わさり、軽やかな音を放つ。
瞬間、マウロは大きく目を見開いて全身を強張らせた。
逃げなければ。
反射的に黒髪の男から離れようとするが、未だ麻痺の暗示は健在だ。
僅か震えるに留まるマウロの視界の中、バジリオは穏やかに微笑んでいた。
一度、暗示にかかった者は、受け入れやすくなる。
ただのフィンガースナップだが、バジリオのそれは暗示の魔力が発動する合図なのだ。

「マウロ」

名を呼ぶ唇に視線が引き寄せられる。
そんな風に躾けられた男は、心の声に反し、瞬きを忘れるほど凝視してしまう。
ゆっくりと再び唇が動き、歯と歯の微かな隙間、舌先がチラリと蠢く。

「水は媚薬」

小さな子供に世界の法則を教えるように。
はっきりと、静かな声で告げられる言葉。
耳孔へと流れ込んだ瞬間、マウロの身体のあちこちが、カッと甘い熱に襲われた。

「……っあ、あ…ぁはっ!」

思わず地面に倒れ込む。
その身体を途中で受けとめた男は、デコボコと張り出した太い木の根を避けるように、少し離れた草の上へマウロを寝かせた。
余裕を持って覆い被さりながら、またもや指を軽く打ち付ける。
今度は二回。
パチンパチンと立て続けに鳴るや否や、マウロの身体の痺れが掻き消えた。
しかしだからと言って、すぐに起き上がり、バジリオを殴り倒してこの場を逃れる事は出来ない。
何故ならば、触れられてもいない身体のあちらこちらがジクジクと淫らに疼き、彼の意識を奪ってしまっていたから。

「なっ…んだ、これっ……、バジリ、ォっ……お前……何をし…たっ……」
「新しい暗示を思い付いてね。どんなもんか試させてもらった。どう、気持ち良い?」
「んぅうっ……」
「こことか、こことか……」

上から見下ろすバジリオの指が、相手の頬や唇、開けたシャツから覗く乳首を順に指差していく。
言われた通り、どこもかしこも数倍敏感になったようで。
マウロは吹き抜ける風にさえ感じて、仰向けの姿態を大きく震わせた。
上から軽く押さえ付け、バジリオは悪戯っ子のように舌を出す。

……続く。


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