REBORN
恋人は風紀委員長
昼下がりにしては遅すぎて、夕方にしては早過ぎるトキ。
「やっぱり綱吉のお母さんの料理は美味しいね。僕に教えてほしいくらいかも。」
「まぁ そんなこと言われたら母さん恭ちゃんの為に張り切って教えちゃうわよ!」
「ホントですか?」
常日頃から他人と群れることを嫌う俺の彼女は何がどうなってか、大家族である我が家の一員となっていました。
恋人は風紀委員長
「つー君もいつの間にか男の子じゃなくなってたのね…こんな素敵な彼女を連れてくるなんて!母さん嬉しいわ!!」
素敵な彼女と呼ばれた本人を抱きしめキャッキャと騒ぐ母さん。
初めて家にやってきた俺の彼女という存在である雲雀さんを相当気に入ったらしい。
「母さんったら…。」
「だって…自分の息子に恋人ができて、それがこんなに可愛くて綺麗な人なら誰だって嬉しいでしょ?」
もはや自分の事のような喜びよう。
つくづく父さんが帰ってなくてよかったと思う(あの父さんだ、どうせろくな事にならないのは目に見えている。
「お母様、それは褒めすぎですから…///」
コチラもコチラでまた凄い。
ホントに雲雀さんですか?
他人が見たらきっとその一言に尽きるだろう。
他人である母さんに触れられるだけでなく抱きしめられているにも関わらず、トンファーを取り出すどころか嫌がるそぶりすら見せない。
まるで借りてきた猫のように大人しい雲雀さんは新鮮だったが、同時に与える違和感は否めなかった。
「まあ…確かに雲雀さんは俺に釣り合わないくらい最高の彼女だけどね」
これでもこの町の不良は彼女をみるだけでまるで風を受けた埃のようにすっ飛んでゆくんだよ!
なんて本人を前に言える訳もなく………
「君がそんなこと言ってどうするのさ、綱吉。」
「もうそんなこと言わなくていいのよ!ほんと娘ができたみたいで母さん嬉しいわぁ。」
「そんなっ…娘だなんて//」
頬を赤らめ母さんの言葉に照れるように視線を反らす自分の恋人に俺は何か知れない気持ちを感じた。
違和感と言われればそうなんだが…その一言に尽きない何かがある。
そんなよくわからない複雑な感情。
なんだよ…こういうときには役に立たないのか――超直感。
それにしてもアレだけ群嫌いの雲雀さんがここまで家族と………とまでは言い難いが(実際ランボは彼女にとって相手にされるどころか存在していない扱いになっている)少なくとも母さんとは打ち解けることができるなんて俺も驚いたものだ。
てっきりそういう時期になっても俺が彼女の家に泊まるのだばかり考えていた。
それがどうしてあっさり我が家に居座り、揚句 自分の母親と新婚ほやほやの嫁と姑みたいな関係で仲良くドラマ展開を繰り広げてるんだろうか…
悪いわけじゃない。
寧ろ彼女に他人と打ち解ける心が生まれてている兆候なのだと思えば幸せなことなのだ。
それに夕飯の後片付けを手伝っていた時のままの恰好、つまりは母さんが何時も身につけている紺のエプロンを身につけ談笑に勤しむ彼女は本当にドラマとかで見る新妻のようで…
「やらしい目をむけてんじゃ―――ねぇっ!」
「いてっ!」
そんな妄想たらたらだった自分を覚醒させた渾身の一撃。
何事かと後頭部に響く鈍い痛みに堪え背後を見ればお決まりのパターン。
俺付きの専属家庭教師が俺を蹴りあげた小さな足でいとも簡単に自分の三倍はあるであろう高さから見事に着地していた。
「リボーン!何すんだよ!!」
「雲雀を見たままニヤつきやがって…お前かなり気持ち悪いことになってんぞ。」
「あーやっぱりそうなってた?」
「あぁ。ボンゴレのボスが聞いて呆れるくらいにな。」
自覚はしていてもやめられない。
それだけエプロン姿の雲雀さんというのは新鮮で愛らしいものなのだ。
そんな姿に頬が緩むのは仕方がない。そう自己解決して再び彼女の方に視線を戻す。
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