REBORN
黒が白に染まるトキ
純白の部屋は哀れ一生開かない鳥籠の中
純白の服は憎きアナタを壊した奴らの証
純白に平伏すは美しき一羽の漆黒の鳥
《黒が白に染まるトキ》
ホワイトスペルの存在そのものを表したかのような白の部屋。
その白を鮮やかに飾る赤い液体は無論僕の物ではなく、目の前に倒れる彼のモノ。
否−−彼のモノだったが正しいだろうか。
床に零れた彼の血液は軽く乾き、黒ずみ始めている。
「……ぅうっ…ぐ…………」
口から溢れるのは内蔵の損傷によるものか、先程から床を真紅に染めてるソレと必死に押し殺された苦痛の声。
それを無視して蹴り、殴り意識が遠退く寸前で頬を叩き覚醒させ―そしてまた最初に戻る無限ループ
それも飽きた頃、惨めに床にはいつくばらせた男の横腹を踏み潰してしまう勢いで勢いよく圧迫する。
「っぐぁ…はっ……ぅ……ぁ…………」
死なない程度の酸欠状態を引き起こさせ、苦しめ痛み付けるその行為は世間一般でいう拷問だった。
しかしいくら暴行を奮おうが彼のその頑固たる意思は動かなかった。
悲鳴をあげるでもなく
泣きわめくのでもなく
かといって決して口を割ることはない。
煩わしい
情報を吐けば楽にしてやるというのに………
端正に整った顔は苦痛に歪み、きっちりと着込まれていたスーツも今や散々及んだ暴力行為によってボロボロだった。
「そろそろ吐いてもいい頃じゃない?」
そもそも何故自分がこのような行動をしなくてはならないのか
己に問いかけるその行動とは裏腹に既に答えは出ている。
墜ちないのだ
ボンゴレが。
決して手を抜いたはずはなかったのに
重要支部を潰そうとしたときも、圧倒的な数を用いて本部を潰そうと攻め込んだときも決してボンゴレは堕ちなかった。
壊滅状態にまではした、が同時にこちらの部隊も戻っては来なかった。
沢田綱吉…彼を殺せばボンゴレは全て終わると思ってたのが間違いだった。
そう―僕の考えが甘かった。
ボンゴレを支える6つの柱を、守護者を甘く見すぎていたのだ。
そして雲雀恭弥はその中でも髄を抜いていた。
沢田綱吉に匹敵するほどの戦闘能力、世界中を見渡せると噂される情報網を所有する財閥、どの型にも当て嵌まらないトリッキーな戦闘スタイル。
一個人でこれだけのものを所有している者が他にいるだろうか。
それを見落としていた自分も自分だが………。
「はぁ………いい加減吐いてよね。恭ちゃん達が何を仕出かそうとしてるのか、ボンゴレの奇跡の大逆転計画とやらをさ―――。」
ボンゴレは何かをやらかす。
それは今までの経緯、行動からでたほとんど確定的な事実。
なら直接本人に聞くのが早いだろうと僕は踏み、正ちゃんの制止を振り切り数え切れないほどの苦労とそれはそれは数々の犠牲を経てようやく捕まえた美しい東洋人の雲の守護者は何かを吐く所かコチラに屈する様子すら見せない。
揚句の果てには
「僕が僕であるかぎり…………あの人を殺したアナタなんかには絶対屈しない。」
などとほざきだす始末。
自分の立場が全く理解出来ていないのだとしか取れない。
「もういない彼に縛られて生きる道を取るの?哀れだねボンゴレの雲の守護者ともあろう君が。」
「なんとでもいえばいい。僕は君には屈しない。」
言葉にも拷問にも屈しない、自白剤もとっくに人間の投与できる限界ラインの量を投与した。
あとは…何があっただろう。
今まで此処まで堪えた輩がいなかった分、何をすればいいのか、正直計り知れていた。
「ほんと、ボンゴレもとんでもない守護者をもってくるねぇ。面倒ったらありゃしないよ。」
ん………?
自分が放った言葉、耳にひっかかるキーワード。
あぁ…あるじゃないか。
この男を堕とすための最高の儀式が。
「なら…もう手加減はしないでいいよね。」
「……………。」
「あぁ安心していいよ、恭ちゃんが大好きな行為だろうから。」
理解できなかったのだろうか、ぎっと見据えられていた瞳が一瞬泳ぐ。
あぁ…これからこの瞳がもっと歪められていくんだろうね、というサディズム思考に体が歓喜に震えた。
「どうせヤってたんでしょ。男同士だってやろうと思えば出来るし。」
やっと何をするのかが解ったのだろう。
僅かな抵抗が少しだけ、激しくなった気がした。
だがもう遅い。
君の体はすでに君をこの白の世界に閉じ込めた時点でこの手に堕ちた。
そして今から君の魂を僕の物に。
もう君は白から逃れることはできない。
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