がらくたスピード
手を繋ぐ。すっかり暗くなってしまった夜道だけれど、田舎とは言え街灯はしっかり歩く道を照らしている。
冷たい空気など吹き飛ばすように、肌が触れ合うところから温まっていく気がした。
何かを話すか、と聞かれれば、特に何もと答える他無い。別に特別な、恋人らしい特殊な甘やかな会話は無い。部活の他愛もない話やら、学校で何があったとか、耳の痛くなる進路の話しだとか、要するに日常会話。
愛してるを囁き合うだとか、そんな会話は欠片も無いけれど、でも確かに俺と清水は「恋人」だった。

遊び尽くしておもちゃでは無くなってしまったがらくたのように、俺たちの進むスピードは緩やかで。
でもその早さを、心地よく感じていた。


けれど実際進むスピードと、気持ちのスピードは、仰天するほどに全然違う。
同じがらくたでも、俺のは壊れてしまったがらくたらしく、坂道を転げ落ちるような、猛烈な早さで下っていく。
それはもう、遮るものなど何もなく一直線に、清水に対して堕ちて行っているというのを、顕著に表していて。

(堕ちるとこまで、堕ちたらどうなるんだろうなぁ、俺)

そんなことを緩やかに考えて、いつもと同じ調子の清水に相づちを打つ。
相反するスピードで、俺は清水に堕ちて行く。



がらくたスピード





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あきゅろす。
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