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銀の月、夜の黒
※遊廓パロ



「あれ、珍しい」

俺の顔を見るなり男は静かに寄って来た。


「月が綺麗だったから」
「月?」

「そうだ……」

月が金色ではなく白銀に輝いていて、暫く見ていたらお前に会いたくなった。
口に出すと男は

「変な人…こんじき、の方が見栄えいいじゃない」

ふわりと笑って窓の縁に腰掛け、簾の隙間から空を見上げた。


ぼぅっと輝く月
雲間に隠れては姿を見せる。


「本当に綺麗だ…」

ゆっくりと腰を上げ、隣りに寄り添い同じ月を見上げる。

小さく漏れる光を辿ってその白銀に触れてみたくて
手を伸ばせば届く気がしてしまう
まるで幼子のような羨望



「…ん、」


白く朧気な銀色に触れ此方に引き寄せると、大人しく胸の中に収まってくるその温もり。

やはりこれは白銀に輝く月
太陽に触れて火傷しないよう、神様が作り出した―……






****






「あれ、珍しい」

思いがけないお客さん
驚いた…この曜日のこの時間は初めてだ。
思わず歩み寄る。



「月が綺麗だったから」
「月?」

「そうだ……」

月が金色ではなく白銀に輝いていて、暫く見ていたらお前に会いたくなった
薄く微笑んでそんな事を言う。


「変な人…こんじき、の方が見栄えいいじゃない」

金色の方が壮麗な気がするけど、窓の縁に腰掛け簾の隙間から空を見上げたら本当に月が綺麗だった。


「本当に綺麗だ…」

暫くすると雲間に隠れて姿を消す。
漆黒の空
深まる夜

どこまでも吸い込まれそうだ。


すると目の前の男がゆっくりと腰を上げ、隣りへと
寄り添って同じ夜空を見上げる。


月を飲み込む闇を辿ってその夜に溶けてしまいたい
手を伸ばせば連れて行ってくれる気がして
まるで幼子のような懇願



「…ん、」


黒の着物が視界を塞ぎ、厚い胸の中へ…その温もりに柔らかく包まれた。



漆黒に呑まれる夜
それはきっと陽が昇って二人が離れ離れにならないよう、神様が作り出す―……




銀の月、夜の黒。

終わり



凪こ。様
お題ありがとうございます!


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