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なんてもどかしい二人なんだろうと思う。
自分が口を挟んではいけないことだと判っているし、二人の関係が進んだ先が想像できなくて恐くもある。けどきっと、もうすぐ動き出してしまうんだろう。だってお互いの視線の先に気づきはじめているのだから。


私の部屋として与えられた押し入れには窓というものが無い。夜兎である自分には日の光を浴びすぎずに済むので丁度よかったが、朝がきたことが判らないのが難点だ。
だから、いつも朝は新八が襖を開けて起こしてくれる。
もちろんすぐに起きれる訳も無く、布団の上でゴロゴロしていると新八が銀ちゃんを起こす声が聞こえた。
続けて台所から朝食の準備をする音がして、しばらくすると味噌汁のいい匂いが届いてきた。
匂いに誘われて台所へ向かうと新八が笑顔で挨拶を告げ、顔を洗って来るように促された。
そうしてできあがったご飯を三人で囲み賑やかに食事をする。

その後は各自自由行動。たまに仕事が入っていることもあるけれど、本当にたまにだからこの時間は定春と一緒に遊びにでることが多い。
でも今日はなんとなく遊びにでる気分ではなくて、ソファーでゴロゴロしながらテレビを見ていた。
新八はパタパタと家事に勤しんで、反対側のソファーでは銀ちゃんが同じ様にゴロゴロしながらジャンプを読んでいる、ふりをしていた。
だってさっきからページをめくる音がしない。
横目で確認すると、案の定新八を普段からは考えられないような優しい目で見つめていた。
その甘ったるい目線に気付いたのか新八が振り向くけど、それと同時に銀ちゃんは視線をジャンプへと戻した。
新八は首を捻りながらもまた家事をこなしはじめ、銀ちゃんが新八を見つめる。
その繰り返し。

その逆の場合もあって、たまに銀ちゃんが料理をしたり、家具を直したりしているときに新八はその背中に見惚れていたりする。
銀ちゃんもその視線に気付いてるみたいで機嫌良く作業をこなしていく。

お互い意識しあっているのは傍から見ていれば丸判りなのに二人はなかなか一歩がふみだせないみたい。

でも…

「早くくっついて、私をホントの娘にするヨロシ。ね、定春?」
「わふっ!」

その一歩まであと……少し。

END



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