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一方坂田は、自分に微笑んだ志村の姿を見つめ、なんだろうかと考えた。実は坂田は卒業後の事を余り考えてはいなかった。

生徒とのこんなやりとり慣れていたからと言うのではなく、沢山の生徒を見送ってきた過去を振り返れば、別れは当たり前であるのに、今こうして志村の新しい道が現実に決まっても、何故か自分と離れてしまう実感が湧かないでいた。

お前ならやっていけると激励した今の言葉はもちろん本心であるのに、それでも志村は自分のそばを離れる事がないと心のどこかではそう思っていた。

しかしとりあえずは志村が予想より動揺していた為、励まさねばと坂田はまた口を開いた。

「お前は卒業したってずっと俺の…、あ、いや何でもねー」

しかし坂田は突然言葉に詰まりやり直しだとまた頭を巡らせ始めた。志村はあまり気にしてない様子で坂田がまた自分に喋るのを口を挟まず従順に待っていた。坂田は志村のそれに内心ではほっとし、言葉を探す振りで誤魔化した。

今坂田はいつまでも俺の生徒だと言おうとしてそれは違うと途中で言葉を抑えてしまった。いつまでも教師と生徒では嫌だと、自分の口から出掛かった言葉を無意識に拒絶した自分に少し苦さを覚えた。



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あきゅろす。
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