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だけど改めてその大切さに気付いた所でいつまでも学生で居られる筈もなく、まして志村は自ら坂田から離れて行かなければならない。
また道に迷い不安を覚えた時には、自分を撫でるこの手はないのだ。考えれば考える程に寂しさだけが溢れ出した。坂田の強烈な存在感が志村には堪らなくなった。
「先生、あ、あの!また会いに来てもいいですか」
今はどんな形であれ彼を失いたくないのだと志村はまるで乞うように坂田を見た。自分の思いを叶えたいという気持ちはどこにも無く、とにかく自分にとって今後得がたい人物なのだと、そんな存在にまでこの一瞬で坂田を高めてしまっていた。
数ヶ月で来る別れが、志村をそんな感傷的な気分にさせていたのもあるのだろう。随分と思いつめた顔を坂田に向けていた。
「ったく今生の別れみたいな顔してなんなんだよお前は。お前ならいつでも迎えてやるよ」
まだ卒業まで時間があるのだからと志村の切迫感をほぐすようぽんと頭を軽く叩けば、志村は僅かながらでも坂田との未来が開けたかのような安心感を得て、しかし今はそれだけでも大満足で坂田に安堵の表情で微笑んだ。
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