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答えは一つ





目で追うようになったのは、いつからか。
自分でも気がついたらもう、遅かった。








ただ今帰りましたー。

少し明るめの声で帰ってきたことを告げるのは新八。
スーパーの袋がガサガサと音を立てながら玄関先から姿を現した。





「おう、おけーり」

台所に向かって、冷蔵庫に買ってきたものをしまっているのを後ろから見る。


近づけば、ふわりと香る匂いに眉を顰めてしまう。



「…どうしました?」

顔を上げてきた新八に、しかめっ面のまま口を開く。




「香水臭い」



スンスンと鼻を鳴らして新八の頭を掴みながら匂いを嗅ぐ。


きつい香水の中に、新八の石鹸の匂いが隠れていた。




「あだだっ!そ、そうですか?」

ほんの少しだけ焦ったような口調で自分の袖口に鼻を近づけて嗅ぐ仕草が、少し子供っぽく見えた。




「買い物行ってたんじゃねーの?」

少しだけ責めるような口調。
自分の中に有るモヤモヤした黒い感情をぶつけてしまうように。




「か、買い物に行ってましたよ!」


心外だと言わんばかりの顔で、少し興奮したのか顔を赤くしながら怒っているような、悲しんでいるような。


そんな顔だった。






相手が女だろうが男だろうが関係なかった。
俺からコイツを奪っていこうとする奴が許せなかった。


許せない。なのに、この想いすら言えない自分も許せなかった。







何時だって、コイツはここを出ていこうと思えば出来るんだ。


焦りと危機感。

いつも見るたびに付きまとう。



触れることに怯えている。
きっと、一度触れてしまえば、もう二度と手放せなくしてしまう。






「…銀さん?」


困ったように眉を八の字にして見上げてきた。

頬に触れようと手が勝手に動いてたことに驚いて、
そのまガシガシと新八の頭を遠慮なしに撫でた。




「なんでもねーよ」


その言葉に何とも知れない顔をした新八は、変な銀さん。と呟いて、笑ってた。






ぐっと拳に力を込める。


ああ、止めてくれ。
そんなに無防備に笑わないでくれ。

どれだけ必死で押さえているか、きっとお前は知らないんだ。






「今日の夕飯なに?」

「今日は卵が安かったのでオムライスです」





なぁ、知ってるか?
こんなにも俺の心をかき乱すのはお前だけなんだ。






(お題 Circulation.)


あきゅろす。
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