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02.束の間の休息






ほんの少し寒い家路。

キラキラと輝く星がとても綺麗だった。




カラカラと静かに玄関の戸を開けて帰って来ないと思いながらもただいま、と声を出した。




静かに、静かに家の廊下を歩いていく。
ギシギシ音を立てるのはこの家が、もう何年も私達を見守ってくれたから。







「…新ちゃん」


スッと居間の襖を開ければ眼鏡は机の上に置いて寝転んでいる弟の姿を見た。






そっと近づけばスウスウと寝ている姿に笑みをひとつ落とす。






右腕を枕の様に頭の下に置いて。
投げ出している左手が目に映った。




「あら…?」




左手に有る違和感。



襖は庭が全開で。
不用心だと思えば闇夜に輝くキラリと光った何か。







庭に置きっ放しにしていた下駄をカランと履いて近寄れば、最愛の弟がとても嬉しそうに、大事そうにしていた指輪だった。





拾い上げて空にかざせば月夜に反射する。








僕達は結婚なんて出来ないから。
形だけでもって…あの銀さんがくれたんです。




はにかむように笑った顔を覚えてる。
とても嬉しそうだったけれど、どこか遠くを見ていた気がした。






「…ぎ……さん…」




ぽつりと聞こえた声。

丸い頭をそっと触れれば、ほんの少し寂しそうに笑った気がした。







あの人はこの子を好いてくれている。


私はこの子がどれだけの劣等感を持っていたかも知っている。







もう一度優しく撫でて、立ち上がる。
隣の部屋から薄い毛布を持ってきて起こさぬ様に体に掛けてあげる。







私は、いつだってこの子の味方でありたい。

でも、この子が後悔する姿は見たくない。




結局は二人を信じるしかないのだ。





「…お休みなさい」



スッと襖を閉じて弟の顔を見て言葉を掛ける。
返事なんてないのは当たり前。




ひとつ、ため息を。
ぎゅっと握りしめていた鈍く銀色に輝くリング。





手首にぶら下げていた巾着にそっと仕舞い込んだ。





肌寒い秋の風がひゅるりと吹いた。






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