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novel
恋愛は障害や困難があってこそ


雨がしとしとと窓を伝い、六月のじめじめとした空気が万事屋に立ち込める


雨が降っているせいで空気を入れ替える事も出来ない


外はいつもの歌舞伎町とは打って変わって、どんよりと憂鬱な雰囲気だ



ソファに胡座をかいて、酢昆布を囓る神楽は、外を見てふぅっと溜め息を吐いた




“遊びに行きたかったのに…”



今日だけは雨、降って欲しくなかった



でも単に水が降ってる日ってだけだし


傘指せばへっちゃらだ



…よし、やっぱり出かけよう





「はぁ〜降って来…あれ、神楽ちゃん」


玄関で黒い靴を履いて、標準装備の傘を片手によし、と立ち上がると


玄関の戸が開いて、びっしょびしょに濡れた新八が駆け込んで来る


びっくりして後退りした



「…おかえりアル、新八…びちょびちょネ」

「うん、出た時は降ってなかったんだけどね…ちょっと神楽ちゃんタオル持って来てくれる?」

「うん、分かったアル」



洗面所に入って、戸を閉める

ドコドコ五月蠅い心臓を落ち着かせ、急いでタオルを2・3枚引っ掴む


あの塗れ具合を見ると、かなりの土砂降りだ

通り雨ではなさそうだ



玄関に戻り新八の濡れた手に真っ白畳みたてのタオルを手渡した






「有り難う神楽ちゃん」

「ったく新八はどんくさいネ」

「いやどんくさいとか関係無いからね。雨降って来ちゃったんだもん、傘持ってなかったし」



あはは、と笑いながら濡れた頭をくしゃくしゃと拭く

袴が水を含んで肌にへばり付いていて、新八の体格がよく見える


アイツより少し小さい体


アイツより少し背が低くて


でも、頼り甲斐のあるマミィ



寒いのか少しカタカタと震える新八の肩に、さっきとは違う色のタオルをかけてやる

そして少し強めにタオルを擦り付ける


「…有り難う、神楽ちゃん」

「もうびしょびしょアル、着替えるヨロシ」

「でも僕着替え持って無いから…大丈夫だよ、乾かすから」

「乾かすなんか時間掛かり過ぎるアル。なんかある服適当に着るヨロシ」

「…うん、分かった。有り難う」

「…うん」



にっこり笑う新八を見て、何故か凄く暖かい気持ちになる

気恥かしくなって、タオル越しに肩をギュッと揉んでみる
予想以上に硬い肩


家事のし過ぎだろうか


本当にマミィみたい



「あ、そう言えば玄関で靴履いてたよね?何処か行くの?」


聞かれてハッとする

行きたいけど、この雨じゃ…
多分いない


「別に行かないアル。新八が遅いなと思ったからちょっと覗いてみようと思っただけネ」

「あ、そうなの?…本当に?」

「…本当ヨ。大丈夫ネ、何処へも行かないアル!!」

「そっか!!あ、酢昆布買って来たよ」

「マジでか!!太っ腹アル新八ィ」

「よし、じゃあこのタオル洗濯機に入れて来て?そしたらあげるよ」

「お安い御用アル!!キャッホォォォ!!!」

「頼んだよ」



新八が台所に入るのを確認して、洗面所に入った



この雨だし、諦めよう


こんな雨だし…




今日が駄目なら明日がある

明日が駄目なら明後日がある


いつだってアイツは




あそこにいるもん





(今度会ったら…取り敢えず飛び蹴りかましてやるネ)





END..













分かりにくいですが初の沖神



あきゅろす。
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