UTAU幻想譚-Larks Tale-
2
朝食後、二人はそれぞれの得物を携えて村の門まで来ていた。
この村は、山の中腹にある。門はトンネルのような物で、それをくぐらないと外には出られないのだ。
「さってと。行くか」
そう言ってトンネルに踏み込もうとした次の瞬間。
暗がりから、漆黒の狼が姿を現す。
普段目にする獣と、何か違う。
それ以前に、村に獣が現れる事など今まで無かった。
本能的に危険を感じた二人は、得物を手にとる。
それに気付いたのか、狼は栄二に飛び掛かろうとする。
「ちょ……こっち来ないでよっ!」
急な事で焦っているのか、栄二は弦を張り終えていない。
「栄二っ!」
それに気付き、ソラは駆ける。だが、間に合いそうにない。
「――っ!」
「……あ……」
栄二が固く目を閉じた。ほとんど同時に、獣に何かが刺さる。
「……栄、一……?」
そこには、立っているのがやっと、という程ぼろぼろに傷付いた栄一がいた。
獣に刺さったのは、栄一が投げた彼の槍だったのだ。
「大丈夫、か……?二人とも……」
「それは兄ちゃんの方だよっ……!」
「……大声出せる元気があるなら、大丈夫みたいだな……」
栄一の後ろから、同じように傷だらけのマコも現れる。
「栄二、二人を診療所に連れていこう」
「……うん」
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