企画小説
3
男の手が身体を這い、顔に辿り着く。耳に熱い吐息がかかり、ぞわぞわと身体が気持ち悪さで強張る。

「ん、んぅう!!うぐ、っう!」

突然優しかった男の手つきが変わり、乱暴に髪を掴まれ引っ張られた。そのまま後部座席の上を引き摺られ、車の外に落とされる。縛られているため受け身もとれず身体が叩きつけられ、特に一番始めに打撲した肩はびりびりと痺れを伴った痛みを訴えた。しかし落とされると悟った瞬間に覚悟した程の痛みは来ず、落ちた先は若干柔らかいふわふわした感覚があり、その上ちくちくと肌を刺す擽ったい感覚と、土のにおい、それらのことから草むらの中に落とされたのではないかと推測する。しかしそれだけわかっても、なんの意味もない。

遅ぇんだよ、と苛つきが含まれた野太い、初めて聞く声が耳に届いた。車に乗せられたときに聞いていた声とは違う、先程髪を掴んだのはこの男のようだった。

「ぐっ、んぅぐっ、…っ」

手も足も動かない俺を男は、落とした先から更にずるずると引き摺る。引き摺られる痛みを逃がす方法もなく、頭皮が悲鳴を上げ髪が千切れる音が呻き声に混じり聞こえたような気がした。痛い痛いとそれだけが頭を支配する中、勢いをつけられ叩きつけるようにして再び草むらに投げられた。しん、と静まり返った空間に、身体が震える。なにをされるのか全くわからない、逃げる手段も抵抗する術もない。恐怖を抱くには充分すぎる状況だ。

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