企画小説
3
薄暗いその部屋の、悪趣味と評価されない程度に豪奢な装飾が施されたテーブルと、柔らかな黒のソファーが置かれている箇所まで足を進める。昔は勝手にベッドに潜り込んだり、ソファーに座ったりしていたが、今はそんなことをする訳にはいかない。
立ったまま、四木さんの指示を待つ。

「………っ!?」

ふと、ベッドの方に目をそらした瞬間だった。背後から四木さんの腕が伸びてきて、顎を捕らえられた。後ろを振り向かされ、昔の優しいキスではない、舌が口内を蹂躙する乱暴な激しいキスをされる。身体を捻り四木さんの方を向き肩を押し、離れようともがいてみるもビクともしない。

腕を引かれ、ベッドの方へと引きずられるようにして運ばれる。叩きつけるようにベッドに投げ出され、息が詰まった。
インナーを抜き出され、その下に四木さんの手が入ってくる。胸の辺りまで服を捲られ、四木さんのその手を慌てて掴んだ。

「しきさ、…四木さんっ!やめてくだ、」

顔の真横を殴るようにして、四木さんの手が置かれた。びくっ、と身体が跳ね、四木さんをおそるおそる見上げた。その目は冷たくて、今更ながらに幾つもの後悔が込み上げる。内心恐怖で戦きながらも、四木さんと視線を絡ませ、会話を交わす。

「……理由をお伺いしても?」

「っ、…好きなひとがいます。だから、」

「わたしは用無し、という訳ですね」

「………っ」

違う、なんて言えなかった。
今まで散々甘やかしてきて貰って、他に好きな人ができたらもういいです、なんて都合が良すぎる。四木さんだから許してくれる、なんて。

「舐めてんのか、ガキ」

「いっ、うう」

前髪を鷲掴みにされ、頭を上げさせられる。そのまま揺さぶれ、髪がぶちぶちと音を立て千切れ、抜ける。ぐらぐらと視界が揺れ、声を漏らさないように唇を噛んだ。
暫く揺さぶられた後、投げつけるようにして髪を離されベッドに頭が沈む。くらくらする中でみた四木さんの顔は、全くの無表情だった。

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