企画小説
2

「あー…くせぇ。手前はいつもくせぇが今日はいつもよりくせぇ」

「死ね」

「誰のにおいだ、これ」

「…誰?」

そう言われて頭に浮かんだのは、今日共に過ごしていた四木さんだった。密室で長時間話をしていたため、俺に断りをいれて吸っていた煙草や、もしかしたら香水のにおいもうつっているのかもしれない。

「君は犬なのかい、シズちゃん」

「うるせぇ今日誰といやがった」

「…四木さんだよ。言っとくけど、ただの仕事相手だから。なんにもしてないからね」

「ああ?……これはなんだよ」

手に抱えていた四本のワインが包まれている紙袋を奪われ、シズちゃんが一本のワインを取り出した。そのまま軽快な音を立てながら引き抜かれたワインコルクが、床をころころと転がった。ちなみにそれは素手で引き抜かれた。流石化け物である。

「ちょっとなにしてんの!?勝手なことしないでよ、これ俺が貰ったものなんだから!!」

それを奪い返そうと手を伸ばすと、不機嫌を体現していた顔が更に歪んだ。そして、シズちゃんの手がおもむろにワインボトルの口を下に向けた。
トポトポと音を立てて落ちていく紅い液体がぶつかったのは、俺の頭だ。あまりのことに身体が固まってしまい、結局それを全身に浴びる羽目になった俺は、漸く止まったワインのシャワーに怒りでひきつっているであろう顔を上げた。

「………なに、してんの」

「手前のなんだろうが。返してやっただけだろ」

「…………最っ低。帰って。今すぐ。
君と違って俺に優しい四木さんのた、め、に、仕事して、わ、ざ、わ、ざ、四木さんが俺のために用意してくれた美味しいワイン飲むんだから」

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あきゅろす。
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