企画小説
2
臨也はビクッと身体を震わせ、ぱっと顔を上げた。あの野郎、邪魔しやがって。

「…誰?」

「知らねぇ」

「いや静雄って呼んでるし…」

「しーずーおおぉ!!」

「……ほら」

思わず舌打ちをし、臨也を膝から降ろした。スタスタと玄関に向かい、ドンドン叩かれるドアを壊さない程度に内側から叩く。

「静雄、開けろ!」

「うるせえ帰れ!!」

「マジやべーんだって、包丁持った女に追われてんだよ!死ぬ、殺される!!」

「どうせ自業自得なんだろうが死ね!」

言い放ちそのまま放置しておこうと思うものの、ドアを叩かれ続ければ確実に苦情がくる。普段ならまだいい、中に入れてやり邪魔にならないよう押入にでも詰め込んで放置していればいいのだが、今は臨也がいる。

「開けるまでずっと叩くからな!明日苦情がくるぞ!大量に来るぞ!!開けろ、開けろ、開けろー!!殺されるー!!」

「うっぜぇえええ!!!」

あまりの鬱陶しさに咄嗟に開けてしまったドアから、不穏な音が聞こえた。鍵がぱっきりと壊れているのを見て、苛立ちが倍増する。

「いやぁー、まいった!本命じゃない彼女にもう会わねぇっつったら包丁取り出されちまってよぉ、まあ俺、本命いねぇけど。ただの遊びだっつーのに酷いと思わねえ?マジ殺されると思って逃げてきた、っつー訳で、暫くここに住むからよ、お前はどっかで野宿でも、」

「今すぐ刺されてきやがれこのクソ野郎がぁああ!!!」

鍵の壊れたドアの前にいるのは、白いスーツにピンクのヘッドホンを肩にかけている俺そっくりの顔をした男で、そいつはへらりと情けない笑みを浮かべながら、煙草をくわえている。

「まあ兎に角、入れてくれ!」

「その女んとこ帰れ!」

「死んじまうじゃねぇか!!」

「死んでこい!!」

埒のあかない言い争いが続く。
殴ってその辺に捨ててこようと拳を握ったその時、

「シズちゃん?」

後ろから声が聞こえてきた。
振り返れば声の主はやはり愛しの恋人のものであって、俺の後ろから服を握った臨也は、いい加減にしないと本当に怒鳴り込まれるよと僅かに眉間に皺を寄せていた。
そんな顔もかわい、

「可愛い……」

俺じゃない俺に似た声で、呟かれた声の方を向けば、そいつが丁度くわえていた煙草を落としたところだった。

あれ、こんな光景前にもどこかで…
こういうのをなんつーんだっけ。

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