短編小説
3
それから暫く経った頃。
臨也が泣きながら僕の元に訪ねてきた。
ぐすぐすと泣き続ける臨也は手を白いタオルで押さえており、それには血が滲んでいる。僕が以前渡した松葉杖は床に放り投げられていた。

「シズちゃん、がっ…俺の指、を、っ…」

震える臨也の手を退かし、タオルを取り除く。その下には左手の薬指が根元からなくなっている臨也の手があり、血を受け止めるタオルがなくなったために血がたらたらと白い腕を伝い流れていた。

「ゆびっわ、が、ないから、って…針、と糸、持ってきて、…っは、シズちゃんがっおれの薬指、縫おうとして……」

「指輪のかわりに?」

「っ、わけ、わかんない…」

「そうだねー」

「きゅうに、しっぱいしたって怒って…おれの、ゆび、を……っ」

「へぇ」

「……っ、しんらっ、ねえ、シズちゃんおかしいよねっ!?おかしいよ…!」

「僕にはわからないなぁ」

「新羅、しんら…」

「嫌なら、別れたら?」

「………っ、………や、だ…」

「ふーん」

じゃあしょうがないね。そう吐き捨てれば、臨也は叱られた子供のように頭を垂れ、黙って治療を受けていた。
そう、ふたりは子供なのだ。僕も含めて。





臨也はなくなった足首から先をじっと見ていた。折られていない方の足だったから、動かしたら駄目だといくら注意しても、足を持ち上げたり、その後診察台に落としたり、元々足があった今は宙になっている空間を掴んだりしていた。

「ない……」

「うん、ないね」

「なんで?」

「さあ?君が一番知ってるんじゃない?」



数日後、臨也は静雄に抱えられて帰って行った。静雄は自分がやったことだというのに、臨也の足を見て悲しそうな顔をして、痛いだろ?と臨也の頬を撫で、その後臨也は可哀相だな、と僕に言っていた。家を出るその時合った臨也の目が、助けてと訴えていたが、笑顔で手を振り無視をした。

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あきゅろす。
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