短編小説
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犬(耳)ドタチン×猫(耳)臨也前提
犬(耳)静雄×猫(耳)臨也






長い手が視界の隅にうつり、身体を引き寄せられた。そのままがっちりと背後から抱き締められ、首だけで振り返れば髪と同じ金色の犬耳を生やした仇敵が真後ろにいた。ばっちり目が合い、毛がぶわりと逆立つ。こいつは大嫌いだ、早く死んでいなくなればいいのに。

「……君はいっつも何がしたいの。単細胞に付き合ってる暇はないんだけど」

耳と尻尾がぴんと立ち、肩越しに睨んでみるものの全く意味をなさなかったようだ。俺を抱き締めている手がコートの中に潜り込み、胸元をすりすりと撫でられる。変態め、と悪態をつくが、後ろから首筋に顔を埋められすんすんと匂いを嗅がれる。ゾクゾクと身体を気持ち悪い感覚が支配し、肌が泡立つ。

「ちょっ、やだやめろ馬鹿っ!!」

何も話さずぶんぶんと尻尾を振るこの犬は、ひたすら匂いを嗅ぎ続ける。
それだけなら100000万歩譲ってやっても、その後が問題だ。
首筋を嗅がれながら、そこに熱い吐息がかかる。段々と荒くなっていく息遣いが鼓膜を叩き、抱き締められる力が強くなっていく。犬は嫌い。絶対こいつの前で口に出さないけどこわい。きゅう、と目をかたく瞑る、じわじわと汗が浮かんでいく。

「うぅうう…!!やだっ、てば!」

ぱしぱし尻尾で叩いてやるが、無視される。手に爪を立ててやるが無視される。フーッフーッと威嚇するが無視される。馬鹿、死ねと罵るも無視される。
次第に胸元を撫でる手がインナーに潜り込み、素肌に触れた。ぎゃあああ!と叫んで暴れたら、身体をひょいと持ち上げられ足が浮く。ぷらぷらと足が宙を蹴り、忌々しい犬の脛を蹴るもやはり無視された。
げしげし。

胸を直接撫でられて、恐怖よりも怒りの方が大きくなる。…俺の肌に触っていいのはひとりだけだと言うのに!この馬鹿犬が、死ね!

「いい加減に、っ」

べろり。
項に生ぬるい何かが這った。
ぞわぞわぞわ、涙が滲む。

「――に゛ゃあ゛ぁあぁああ゛!!!!」

やっぱり犬は大嫌いだ。

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あきゅろす。
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