短編小説
4
どんなに自身を扱かれようと、快感なんて微塵も感じない。嫌悪感ばかりが募り、狂ったように足を振り回した。
大きく身体を仰け反らせ抵抗を示す。
すると後頭部が、背後の男の局部に当たった。そこに熱く猛ったものを感じ、ぞわわっ、と身体が硬直する。背後の男を意識すれば、男の息が荒くなってることを感じた。

「やだ、ってば…!う、ぅうっ!?」

前にいる男が達したらしい。
勃ちあがる気配もない自身に、ドロリとした白いものが、滴り落ちる程にコーティングされた。
気持ち悪い気持ち悪い、ありえない。
半ば放心状態だった俺の首から、背後の男の腕が退いた。そして、耳元でジッ、とチャックをおろす音が聞こえ、頬に雄臭いそれが擦り付けられた。ヌチャッ、と嫌な音が響き、背後からそれが頬や髪、耳を好き勝手に擦り付けて絶頂を目指す。

「あ、あ……」

あまりの出来事に、意味をなさない音を洩らした開いたままの口に、前にいる男の、達して汚れたままのそれが入ってくる。髪を掴まれイマラチオを強制され、抵抗しようにも身体の自由がなにもきかなくなった。
――どの位時間が経ったのか、ふと、身体から力を抜き、されるがままだった俺の、腕を戒める力が弱まった。

そこから先はよく覚えていない。

おそらく出せるだけの力を出し、自らの快楽を追う背後の男の戒める手を振り解き、ナイフを取り出した。口の中に入ったままだった男のそれを切りつけたような気もするし、それとも頬を滑る背後にいた男のものを、切りつけたような気もする。もしくはどちらのそれも、切り落としたのかもしれない。

意識が戻ったときは自宅だった。
暫く呆然としたあと手をみれば、そこには血に汚れたナイフが握られていて、俺の手も傷だらけだった。口のなかには青臭い味が広がっていて、それを意識した瞬間、耐え難い嘔吐感に襲われ、風呂場に服のまま駆け込んだ。
嘔吐しながら嫌でも視界に入ってくる自らの服はぼろぼろで、ズボンには白いものがこびり付いていた。

その日着ていた服は全て捨てた。
身体が痛みを覚えるほど何度も洗い、擦りすぎで赤くなった身体を見て、安心した。消毒液を一日に何度も身体に振り掛け、塗り付けた。それでも記憶はなくならない、情けないと自虐的になりながら、毎晩嘔吐感に悩まされた。

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