短編小説
2
臨也はなにかをくわえたり噛んだりしなければ夜深く眠ることができず、それに苛立ち赤ん坊のように夜泣きをしてしまうらしい。初めて一緒に寝たときは臨也がこんな状態を知らなかったから、ぐずぐずと夜泣きをするその様子に随分と驚いたものだ。
慌てて臨也の身体に伸ばした俺の手は、今と同じように寝ぼけた臨也の両手に掴まれ、そのままぱくりと指をくわえられた。
ちゅーちゅー音を鳴らしながら吸う臨也を初めて見たときは、誘ってるとしか思えなかった。だから指でぐっちゃぐちゃに臨也の口内を掻き回して、零れる声に興奮して致してしまったのは仕方ないことだと思う。いつもはツンツンしている臨也が健気に名前を呼んで、ぐすぐす泣きながら貫かれているなんて、盛らない訳がない。可愛かった。
結局翌朝、いつもならツンツンしている筈の臨也が恥ずかしそうにこの癖のことを俺に話した。臨也のこの癖は夜にしか出ないものらしく、この状態になっているときの記憶はぼんやりとあるものの、細かいことは覚えていないらしい。シズちゃんが寝たら抜け出そうと思ってたのに、こんなこと知られたくなかったのに、と臨也はぶつぶつ呟きながらうなだれていた。
だが俺にとってはそんなことよりも、ツンツン臨也がこうして恥ずかしがっている姿を俺に見せていることの方が重要だった。
朝昼のツンツン臨也も夜のデレデレ臨也もどっちも可愛いから、俺が困る要素はなにひとつない。むしろ美味しい。
そう納得した俺は、やっぱりこれからもひとりで寝る、シズちゃんに絆されて一回一緒に寝てみようと思ったのが間違いだった馬鹿死ねとほざく臨也をねじ伏せ、毎日一緒に寝るようにした。
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