短編小説
12.長い恋(静臨)
静←臨/ちょっぴりストーカー気味な臨也





横を向いて眠っているシズちゃんを上から暫くの間観察して、音を立てないように気をつけながら、その顔を近くから見るためにしゃがみ込んだ。毎日、とまではいかないが度々見に来ているこの顔に、いつまでたっても慣れることはない。いつ見ても何度見てもシズちゃんは格好いいし、普通ならば絶対に見ることができない寝顔はすごく可愛い。

怒ってる以外の顔が見たい。
それだけの理由で忍び込むようになったシズちゃんの家のにおいは、煙草のにおい。夜道を帰っているときに、着ている服にそのにおいがついているのが嬉しかった。
お風呂に入らないでそのまま寝ると、まるでシズちゃんが近くにいるかのような気になる。翌朝枕やシーツに移ったにおいにも幸せを感じる。

だから、こっそり忍び込んで寝顔を見て、煙草のにおいに包まれて、それだけでいい筈だった。
なのに、最近忍び込むのに慣れてしまったからか、欲が出てきてしまう。

一緒に寝たい、抱き締めてもらいながら眠りたい、首筋に顔を埋めて眠りたい、頭を撫でてもらいながら眠りたい、
キスをしたい。

首を傾げて寝顔を間近から見て、あいている口に手を伸ばして、それに触れる前に手を引いた。
シズちゃんのほっぺたも口もおでこもどこでも、キスをするのはいつかできる綺麗で可愛くて、優しい彼女の役目なんだろう。俺は本来ならつく筈のない、シズちゃんのにおいだけで充分幸せ。

それでも、少し悔しくて寂しいから、静かにこっそり、シズちゃんの背中側にまわった。布団の上に乗って、ゆっくり横になる。背中に少しだけ触れて、目を閉じる。

…たったの17秒、一緒の布団で寝てみた。
なにをしてるんだろう、と嘲笑が零れる。

「…おやすみ、シズちゃん」







長い恋










片想いざやも可愛いよねって思ったのですが表現力というか文才様ェ

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