アカイ終り ジャラジャラ、ジャラジャラ。 動く度に鎖の音が煩く鳴る。薄暗い室内に閉じ込められて数日────。 今では時間の感覚が麻痺し、昼なのか夜なのか分からない。ただ待つだけ、何もせず孤独の時間を過ごすのみ。 「刑部!!刑部!!!」 遠くからこちらに叫びながら、走ってくる主がこの部屋に向かって来るのが分かる。 我は此処にいる。 小さく呟いた瞬間に襖がスパンッ!!と音を立てて、開かれた。 「刑部ッ!!生きてるか!!」 「生きてる生きてる。我はこの通り此処にいる」 「……ッ、刑部!」 三成はぎゅうっと、きつく吉継を抱きしめる。病の躯には少し辛いと思ったが、この行為に対して文句は一切言わない。苦しそうに一つ一つ言葉を紡ぐ三成に吉継はただ背を撫で、受け入れる。 「貴様は、私を裏切るのか。」 「我が主を裏切る筈がなかろ、三成よ。」 「あぁ、刑部…そうだ貴様は私を裏切らない。疑う余地などある筈がない!!」 ジャラリと鎖の音が足元で聞こえる。最近の三成はおかしいと思っていたが、吉継はそれを見て見ぬフリをしてしまったせいでこのような状況に陥ってしまったことに多少の後悔は感じている。 だが、それを望んだのは………我だ。 三成が我を考え、他のことなどどこかへ行ってしまったかのように愛惜している様に、震えるほど嬉しかった。今の三成の状態は危険だと分かっていながらも、自分は楽しんでいる。 「貴様だけは、刑部、刑部……。」 「やれ、困ったコマッタ。主は手のかかるやや子よ」 歪んでしまった主を、裏切る筈はあるまい。 ただ遠くで声が聞こえたような気がした。 終わりを告げる、優しい言葉を……。 END [戻る] |