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蚕の嗚咽






いつ頃からか、爛れてしまった躯に触れる事が出来なくなった。


歳を一つ一つ重ねる度に、肌を覆う布と包帯が目立つようになった。斑点のように赤黒い模様が白い肌を汚し、鍛えられた躯は痩衰えてしまった。
幾年の間友に触れることを拒まれ続け、淋しさを募らせる一方。ならば側に居る事を義務付け、強引なやり方で縛り付けた。
我が儘ばかりを言い、何度も吉継を困らせるような言動に己でも愚かで嘆かわしいと思う。

だが共にいなければ苦しくなる。
当たり前のように存在し、目の届く場所にいなければ安心することが出来なくなった。

そんな三成に吉継は一言も文句を言わず、ただ薄く笑んで全てを受け入れた。
さて、いつも通り三成と一日の大半を過ごし吉継の部屋に布団を敷き、寝ようかとしている時間帯。今宵も三成が吉継の隣で床につくらしく、布団を一つ多く敷く羽目になった。

相変わらず可愛いやや子だと内心愛おしく思いながら、遠退いてゆく意識にゆっくりと瞼を閉じた。



どれ程の時間が経ったのだろうか。まだ朝になっていないにも関わらず、己の躯に言いようもない違和感で意識が覚醒した。

「……ンッ」

欝すらと目を開け、前方を見てみると暗い影がそこにあった。何だと思いながら、目を擦ろうと手を動かそとした。

「刑部……ハァッ」

聞き慣れた声色。動かない手。
一気に目が覚めてしまい、辺りを見渡そうと試みるがそれは無くなった。何故なら三成が楽しむかのように口づけを交わす。驚きのあまり慌てて抵抗しようと全身を動かし、暴れようとしたが肢体は三成によって抑えられている。
これは夢か、一瞬現実逃避をしようとしたがこれは現。抑え付けられている感覚がある。


「…やめ、三成やめよ。」

想定外な奇行に混乱するも、三成は至って冷静。

「私はずっと貴様に触れたいと焦がれていた。側に居る事は許されたが、触れることはかなわなかった。………私を受け入ろ」

「ヤメッ…!!三成、離せ!このような行いをするなど、気は確かか!?」

尚も口づけをしようとするのに対し、焦るようにして抵抗をする。力の差は歴然としているが、拒むことをやめない吉継の口を抉じ開け、長い舌で這いずり回る。逃げる舌を追い掛けて搦め捕り、卑怯な音を立てて口内を犯す。
顎に唾液が伝うが、それさえも舐めとってしまい吉継は肩で息をしながら唖然とする。「主は…、何をしたか、分かっているのか?」

「貴様こそ分かっているのか?」


今まで我慢してきた。焦がれた肉欲に何度も己を戒めた。
だが人間の欲というものは深く、際限などなく、限界がきてしまう。求めるだけでは、余りにも悲し過ぎた。


「刑部、逆らうな。私を否定するな」

泣きそうな子供ように三成は吉継に縋り付く。それしか吉継を繋ぎ止める方法が見つからなかった。







END


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愛しているのに、脅迫するように命令してしまう三成のお話。





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あきゅろす。
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