離し、離せと 初め、美しいと言う単語が頭の中を埋めつくしていた。 銀色に光るサラサラな髪の毛に、白過ぎる肌。まるで作られた人形のように、力を入れれば脆く壊れてしまうのではないかと思う。 しかし、それは見かけだけの形。 外見とは裏腹に気性が荒く、小姓には手がおえる筈もなく、怯えている者さえいた。 いつも吊り上がった目が、誰も寄せ付けぬような空気を漂わせていた。 「………貴様は私をどう思っている。」 それは唐突な質問であり、吉継は思わず目が点になってしまった。 「我は主の事を良き友と思っている。」 「…それだけ、なのか?」 尚も三成は問うてくるのに、何が言いたいと疑問に思う。 幼少時代から共に過ごし、辛い時も支え合い、助け合ってきた。二人といない友であると吉継は思っていた。 「三成。我は主の言いたい事が今一分からぬ。も少し詳しく話してみやれ」 「………私は、」 どう言ってよいのか分からぬような表情をする三成に、吉継は優しい声色で言う。 「ゆっくりでよい。主なりに言葉にしてみせ」 「……ッ、刑部!!!私は、貴様を愛いと思っている!!」 …………?? 何を言ったのか初めは理解に苦しんだが、直ぐさま三成の言った事に吉継は否定した。 「やれ、それは何の冗談よ。」 「冗談ではない。私は本気だ」 軽く笑い飛ばすも、三成が本気であることは分かっている。だからと言って、はいそうですか、と受け入れる訳にはいかない。 長くいたことで情が移り、共に未来を見ることもできぬ吉継を選んだ。 これは厄介だ。 一人考え、模索するも三成には小細工は効かない。否、聞く気がないと言うのが正しいのか。 「三成、我は」 「御託はもういい。刑部、私は貴様がいいと再三申したはずだ。いい加減受け入れろ。」 そう言うと三成は吉継の頬を撫で、鋭い眼差しで見詰める。 誠に厄介だ。 先を見ることも出来ぬ、腐った者に何を求めるというのか。 「三成、我は主を置いて逝くことになる。それはとても悲しい」 「だが、私は貴様でなければ意味がない。私は…、刑部でなければ……」 我の愛しい子よ。 その思いが深く、正しいと考えるならば。 「あいわかった。我はもう主を拒まぬ」 吉継は震える痩せた身体を抱き寄せ、深い息を吐き出した。 END [戻る] |