荒野を裂く狂気 蝕む病に酷い痛みを感じるようになったのは、ずっと昔の話。全身を蝕んだ病は最早完治することはないと、悟っていた。 「刑部。何を考えている」 「…三成か」 棒立ちしている三成はどこか殺気立っていた。一体何があったのか。少しは考えてみるが、思い当たることは何一つない。 ただ、前々から苛立たせる原因となるのは、一つしかない。 「刑部!!何を考えてるのかを聞いているんだ!!!答えろ!!」 鋭く睨み付ける三成を冷静に見つめていれば、怒声が吹き荒れる。 病んだ体には少し痛すぎるくらいに、腕を掴む。 「三成、すまない。少し考え事をしていた」 「考え事だと、一体何を……、」 途端に三成の顔色を変えた。はて、と疑問に思ったのもつかの間。三成は吉継の腹をグッと押した。 「…うっ。」 鈍痛が腹部を巡り、巻いている包帯に血が滲み出てきた。 「刑部、何故言わない。」 怒ると思っていたが、それに反して三成は静かに怒りを膨らませている。 「三成よ。そう怒るな。われは、今こうして生きている」 「刑部、私はお前だけが死ぬことは許さない。」 「わかっている。心配するな」 あやすように、優しい声色で吉継は囁く。目を閉じて、そっと口元を歪める。 醜いわれを友だと言うのは、ぬしくらいだ。 だからこそ、裏切れないのかもしれないと思う。 「…刑部。」 「心配せずとも、われは死なぬ。それよりも次の戦が控えておる。今は身体を休めよ」 トントンと、背中を優しく叩く。やや子を慰めるように、クツクツと笑い、至福の時を過ごす。 (生きることを諦めないように、ただ強引に繋ぎ止める。) (お前は、私を裏切らない。) END ──────── 何故、大谷さんがお腹に怪我をしたかというと、戦をしている最中に敵にやられて、三成には黙っていた。 という、前置きになっています。 [戻る] |