宝物庫 ページ:5 † 「岡田さんだよね?」 私は俯いたまま頷いた。 「私、花村雪音っていうの。クラス一緒だしよろしくね」 この頃、私は身に覚えもない噂が広まって孤立していた。どんなに、弁解したくても、あんなに一緒にいた友人は私から離れてしまっていた。そんなとき、話しかけてくれたのは彼女だった。 でも、私は信用しきれなかった。 ――ドウセ、アノコタチノヨウニ…… そんな言葉が安易に過った。 それでも、彼女は独りでいる私に気づけばすぐに来てくれた……。 ある日、彼女は一緒に帰ろうと誘ってきた。 「……どうして?」 私は今までの彼女の善意に問いかけた。 彼女はゆっくりと私の目を見た。私はすぐに俯く。 「花村さん、私に近付くと傷付くかもしれないんだよ?」 彼女はゆっくりと話した。 「うん。確かに傷付くかもしれない」 「だったら……」 「でもね、みんなそうだよ。人間知らないところで傷付いて、他人からすればどうでもいいことで傷付いて……。そういうものじゃない?」 彼女の口調は柔らかく、私のすべてを包み込むようだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |