能力者 ページ:5 テレビのチャンネルは麻痺していた。 朝早くだと言うのに、どこもかしこも同じ内容しか放送していなかった。 あるアパートの住民全員が叫んでいたというふざけた内容だった。 しかし、内容は聞いていくごとに奇怪性を増していった。 住民全員はその後、死に絶えたのだという。 怪死だとしか言いようがなかった。 周辺住民によれば、心臓が痛いと口をそろえていたらしい。 「お姉ちゃん、こんなことってあるの……?」 「こんなこと普通じゃない。犯人も不明では警察たちもお手上げだろうな……」 「じゃあこの事件は迷宮入り、だね」 「そうだな……。テレビを消すぞ、これではご飯が不味くなる」 とは言うものの、既に喉が食べ物を受け付けないでいた。 無理にねじ込んでいけば身体は拒絶を起こすだろう。 精神的にもこのニュースは堪えるものがあった。 おそらく、香苗も私と同じ状況に違いない。 こんなニュースを見て、食べ物を平然と食べる人間なんていないだろう。 気が狂いそうなほど、嫌なニュースだった――…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |