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D.buster
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 静まり返る闇の世界。
眩くちらつくネオンが道を照らしつける。
その異空間を闊歩する人間たち。
私はそこで計画を実行するべく徘徊する。
"殺人"
 それだけが私の唯一の存在理由。
死の恐ろしさを私を除け者にしてきた者たちに刻み込む。
私を陶酔させる感覚がそれだった。
「今お暇ですか、お兄さんたち?」
「何だお前、俺たちゃぁ暇じゃねーんだよ」
「そうですか、残念です。じゃあ死んじゃって下さい」
「てめぇ何ほざきやがる!こっち来い!!」
 私は嬉しくて仕方がなかった。
こうも簡単に私のテリトリーに入り込んでくるなんて。
単純な生物は単純な行動しかできない、私の計算は正しかったようだ。
「こんな所に連れ出してどうするつもりですか?」
「ヘラヘラしてられんのも今の内だぞ」
「馬鹿な人たち、あなたたちでは私を犯せない」
「なんだとぉ…!?」
「だって、あなたたち人間でしょ? 何の力も無い人間に私は犯せないと言っているのです。そんなことも分からないのですかお馬鹿さん?」
「こいつ…ッ!!」
 ゾクゾクする感覚、今にも狂いそうな自分を抑えられるのも時間の問題だろう。
優位に立っていると勘違いしているのを追い込むほど気持ちいいことはない。
それが、かつての級友だとしたら至福のひと時になりそうだ。
「食事の時間になりましたよ、出ておいで」
 闇に染まった路地裏のありとあらゆる場所から湧き出る闇。
人型から獣、人外の魔物、全ての闇が男たちを囲む。
リーダー格の男の身体は闇で十字架に掛けられたように縛られる。
 血色の良かった男たちの顔がみるみるうちに青くなっていく。
恐怖の淵に追い込まれたことを自覚したのか、リーダー格の男はガクガクと震えている。
「落ち着いてみんな、いつものことでしょ。まずは、この男以外を食べてみてくれないかな」
 男たちの阿鼻叫喚する声、肉の潰れる音、裂かれる音、骨の音からなる惨劇の重奏。
生者には不協和音にしか聞こえない音、それは私の子守歌。
咀嚼されていく男たちは悲鳴を上げながら私を見ている。
「もっと見て。その目でもっと私を見て!」
 震える一人の男は、おそらく生きている心地がしていないだろう。
もう男の死はすぐそこにあるのだから。
「……じゃあ、いつものことをしよっか。ファルス、一つ剥がしてみてくれないかな?」
「――」
 ファルスと呼ばれた人型の闇は男の指を一本強引に取り出し、それを掴むと一気に引き剥がした。
血がみるみるうちに湧き出す、血は地を染めていく。
「全然ダメ。アトン、一つやってくれないかな?」
「――!!」
 一回り大きな体格の闇が呻きをあげる。
闇が腕を振り上げ、その腕を指に振り下ろす。
独特の軽音と肉が潰れる低音のが響き、闇が去ると男の腕は消え失せていた。
「あなたたちコレで何回目? こんな派手に潰しちゃったら楽しめないじゃない。もういいや、後はあなたたちに任せるから」
 そういうと闇は呻きをあげる。
あの子たちにとって血肉は至高の食材、だから私は供給し続ける。
復讐と銘打ってでも殺人を続ける。
 私の快楽はそれでも満たされない。
何かが足りない、もっと刺激が欲しいと身体が望む――

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