SSS
土方家物語A
※現土初期沖夫婦物語です。息子(誠也:せいや)がいます。
それでも大丈夫ですか?
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12月24日。
街全体をさまざまなイルミネーションが彩る。
「土方さん、色々年越しのとか買いたいのあるから誠也見ててくださいね。」
「あぁ、わかった。」
買い物に来た土方一家。総悟は誠也を土方に預けるとどこかに行ってしまった。
「誠也、離れるんじゃないぞ。」
「へい!」
誠也は土方の指をギュッと握る。
少し歩くと急にグイッと誠也が土方の指を引いた。
「どうした?」
「ちちうえあれ!あれ〜!」
キラキラさせた目の先にはおもちゃコーナー。
その小さな体のどこにそんな力があるのか、土方をグイグイとおもちゃコーナーに連れて行く。
「ちちうえはやく〜!」
「買わないからな。」
一応念は押すが聞いてはないだろう。誠也はおもちゃを眺めて気に入った物を探す。
「ちちうえあれほしい〜!」
「…ダメだ。」
おもちゃを一瞥するがすぐに視線を外す。
「ちちうえあれ〜!」
「最初に買わないって言っただろ。もう行くぞ。」
誠也を連れて行こうとしたが誠也は地べたに座り込んで拒否を示す。
「やだやだ!!ほしい!あれほしい!」
「この前お爺ちゃんに買ってもらっただろ。」
因みにお爺ちゃんとは近藤の事。近藤自ら誠也にそう呼ばせている。土方とあまり年は変わらないのだが。
「でもほしい!ちちうえ買って〜!」
「買ったらサンタさん、誠也の所に来ないぞ。」
そう言うと誠也のでかい瞳にみるみるうちに涙が溜まってきた。
「やだ!サンタさんこなきゃやだ!」
「そうだろ?だからおもちゃは買わない。ほら行くぞ。」
「やだやだ!これ!これほしい!ちちうえ〜!うわぁ〜ん!」
誠也はとうとうおもちゃの前に座って泣き出した。欲しい欲しいと駄々をこねる。
これが近藤相手だと「あぁよしよし」と言って買ってくれるのだが、土方はそんなに甘くない。
「いい加減にしろ誠也!!買わないって言ってるだろうが!そんなに欲しいならずっとここにいろ!お家に連れて帰らないからな!」
土方はそう言うと繋いでいた手を離しておもちゃコーナーから出ていく。
「うわぁぁあぁん!!ちちうえ〜!ちちうえ〜!!」
誠也は焦って土方を追いかける。
「ちちうえ〜!ちちうえ〜!!」
「知らん。」
「びえぇぇん!!ちちうえ〜!!!」
誠也はやっとこさ追い付いて土方の着物の裾を両手で思い切り引っ張った。
「ちちうえ〜!ちちうえ〜!」
泣きじゃくりながら土方の足抱きつく。
「ちちうえごめんなさっ……ごめんなさい!ヒック…えぇん!」
土方は表情は崩さずに屈んで誠也と視線を合わせる。
「誠也、何で父上が怒ってるかわかるか?」
「ヒック…ヒック…せいやが、わがまま…ヒック…言ったから。」
「よし、わかってるな。」
土方は誠也を抱きかかえると嗚咽が止まるように優しく背中を撫でた。
「いいか誠也、男の子はそう簡単に泣くもんじゃないぞ。母上に見られたら笑われるぞ。」
嗚咽の止まらない背中を撫でながら優しく言い聞かせる。誠也は土方の首に腕を巻き付けて土方の着物で涙を拭う。
抱っこしたまま店内を歩いていると買い物のすんだ総悟と合流した。
「もうすんだのか?」
「へい。あれ?誠也寝ちゃったんですかぃ?」
「泣き疲れたんだろ。さっきまでおもちゃせがんで泣いてたから。」
「買ってないでしょうね。」
「買ってねぇよ。他に何もないなら帰るぞ。」
「へい。」
その日の夜は屯所でささやかなクリスマスパーティーが行われ、誠也も楽しそうにはしゃいでいた。
――翌朝――
「ちちうえ〜!ははうえ〜!おきて〜!」
子供の朝は早い。
2人は誠也の嬉しそうな声に起こされた。
「ん?どうしやした?」
「ははうえ!せいや、サンタさんにプレゼントもらった!!」
誠也の腕には大事そうに抱えられているクリスマスカラーの箱があった。
「よかったな誠也。」
土方の大きな手が誠也の頭を撫でる。
「あけてもいい?」
「いいですぜ。」
誠也は嬉しそうに包装紙を破いていく。
そして中から出てきたのは昨日誠也が欲しがっていたおもちゃだった。
「わぁ!!ちちうえ!これきのうの!」
「よかったな。サンタさんはちゃんと誠也の事を見てたんだぞ。」
「よかったね誠也。」
「へい!!」
嬉しそうな誠也の笑顔こそ
2人には最高のクリスマスプレゼント。
おわり
厳しいお父さんが好きなんです。
接客業って人間観察出来て凄くためになります。
本当は第2子の話を書こうと思ってたのですがそっちよりこっちの方が妄想できましたので。
皆様、Merry Christmas!
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