カイとソウ《2》
*


長い指が頭皮を撫でるように滑って髪に絡む。
真似するみたいに恢の首に絡めていた指を髪に潜らせた。
間近な瞳が笑んでもっと近付いて、唇が触れると吐息が混ざる。
誘うように上唇を舐められて舌を出した。
「ン…んぅ、ふ…」
背中を包む掌がゆっくりと撫でて降りていく。
時々、肌を掴むようにして揉んで撫でる。
少し擽ったいけど、でも優しい感触に頬が緩んだ。
外に誘い出された舌はそのまま舐めて絡まって。
舌先同士で突っつき合って擦り付けたらじゅわりと唾液が溢れる。
「エロい顔」
そんな風に、エロい顔の恢が囁いた。
空いた手で恢の頬を包むと目を細めて擦り寄る。
見た目とは違うかわいらしい仕草に胸の奥がきゅうきゅうとした。
「そーたのキスって、気持ち良いよね」
はむり、と唇に噛みついた柔らかな感触。
それがさわさわと動いてそんなことを言う。
「そんなの」
「ん〜?」
恢のキスが気持ち良いからだし。
もっと触れたくなる唇なんだよ。
ちゅ、ちゅ、ちゅ、と小さく吸い付いてゆっくり角度が変わっていく。
伏せられた睫毛が長くて、薄い皮膚の瞼がつるつるとしていて…
「きれい」
零れるみたいに落ちた言葉。
「そーた?」
ふ、と開いた瞼から覗く瞳には恢を見つめる僕の瞳が映る。
どろどろに蕩けた恢への恋情が溢れたみたいな色が恥ずかしくて目を閉じた。
「……っ、あーもう!」
「ぇ、恢……ヒ、ぁあっ!」
鋭く息を飲む音がして、腰をきつく掴まれたと思ったら激しい衝撃が襲った。
さっきまで恢を咥え込んでいた場所に、前触れ無く突き入れられて情けない声が漏れる。
「ハ、ぁ…くそっ」
耳朶に触れたのは唸るような声。
「そんな顔されたら、我慢できなくなるだろ…っ」
押し倒された体が擦り上がるくらい突き入れられた熱塊。
乱れて呼吸すら儘ならない唇からは悲鳴みたいな声が漏れる。
肌と肌が打ち付けられる度に響く音は卑猥で、でも確かに興奮を煽る。
「ゃ、あっ、あああ…っ!ぁあっ、だめ…だめぇっ」
奥を叩かれると走る愉悦の震え。
どうやっても散らせなくて恢の体にしがみついた。
「なにが、だめなの」
潜めた声が熱くて、触れた耳朶からどろどろに蕩けてしまいそう。
「おかしくなっちゃうからぁ…!奥、だめ…ゃあ…っ」
いやいや、と首を振ったのにぎっちりと咥え込んでいる恢が膨らむみたいに大きくなった。
「そー…た、も…黙って」
唸るような声がそう告げると、だめと言った奥を拓くように突かれる。
体が縮むような弛緩するような反する感覚が怖くて、恢の肌に擦り寄った。
抱え込まれた後頭部。
優しい指が好き。
その指が引き寄せてくれる強さが好き。
僕の肌を撫でる熱い吐息が好き。
僕を呼ぶ声が好き。


恢が好き。


頭の中が好きの言葉で溢れる。





──────

ふ、と浮上した意識。
あったはずの温かさがなくて目を開けた。
「恢…?」
呼び掛けた声は恥ずかしくなるくらいの不安を滲ませている。
いつもより恢の物が少ない恢の部屋。
あんなに深く交わったのに、離れた肌の熱が無いと落ち着かない。
早く触れたい。
「ぃ、た…っ」
上半身を起こすとツキンと体の奥が痛んで動きを止めた。
布団へゆっくり体を戻して息を吐く。
体の真ん中にまだ恢が居るみたい。
「恢……恢…か、い…」
くしゃくしゃと毛布を掻き集めて抱き締める。
その、柔らかな感触よりも張り詰めた恢の肌が良い。
抱き締めたい。
……抱き締めて欲しい。




微睡みの中にふわりとした感触。
それからくしゃくしゃと髪の毛を掻き混ぜる。
長い指に撫でられた肌が喜ぶみたいに震えた。
「まったくもー…」
擦り寄ったら呆れたような困ったような、でも嬉しそうな嘆息。
「なぁんでこんなにかわいーんだろ」
ぎゅ、と包まれた熱に頬が緩む。
「恢」
「んー、なぁに?」
とろとろに蕩けた声音は耳の傍から。
向かい合わせに抱き締められて、しっかりとした肩に額を擦り付けた。
「どこ、行ってたの」
「あー…うん。麻姉に叱られてきた」
「麻子さん?」
ちゅ。
頭頂部を撫でるように触れた唇はすぐに離れる。
「そーたをもっと大切にするように、てね」
「そんなの…、今も十分」
「もっともっと、もっと…ね」
甘やかす言葉に歓喜して、それから…
まだ足りないと貪るように欲しがる自分が怖い。
「そーた」
右の目尻を撫でる指先が頬を滑って耳朶を摘まむ。
恢の静かな声に顔を上げた。
まっすぐに僕を見る瞳は揺れることがなく強い。
「恢」
「うん?」
「好き…恢が好き」
「知ってるよ」
だって俺も好きだから。
そう言って笑うと僕の体を抱き締め直した。


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