カイとソウ《2》
*


「あっ、ぁ…やぁ…っ!もぅ、や…あぁ、ぅ…んっ」
いつもは優しく食む唇。
温かさを感じる掌。
甘い熱の籠った瞳。
全部、なくて。
さっきはかわいーからと言ったのに。
触れれば触れるほど冷えていく空気。
どうして、と頭の中で空回りする言葉。
縋るように首へ回した手は払われたりしなかったけど。
「か、い…かぃ…っ!」
呼ぶと僕を見る切れ長の目。
恢の長い指が赤く尖った乳首をくびりだすように摘まんで弾く。
震えた体はまた熱が上がってしまった。
「そーた」
「う…ぁ、ぅん…っ」
そうやって名前を呼んでキスをして。
幾度も繰り返す行為。
滲んだ視界に居る恢は僕をじっと見る。
僕の全部を暴いてしまいそうな強い瞳に逸らすことも遮断することもできない。
恢の舌が上顎の奥から這うように撫でていく。
絡むような唾液の音。
恥ずかしいのに、その音は聴覚から刺激する。
動き回る舌に必死についていくと巻き付いて吸い付かれて、それから溜まった唾液を拐われた。
ゴクリ、と鳴った喉に顔が熱くなる。
「そーたは」
赤い舌が唇を滑っていく。
「俺を見てる?」
感情の見えない声がポツリと落ちた。


──恢を 見る?


目の前にある端正な顔を見つめる。
だって、恢が何を言ったのか理解できなくて。
確かに見つめているのに恢の瞳が苦しそうに歪む。
「俺を、見てよ」
吐き出された言葉は意味がわからないのに、体の奥底を抉る。
じわじわと広がるような鈍痛は息苦しささえ感じて。
「恢」
声に出した恢の名前は情けないくらい震えた。
「僕は…」
見ているよ。
恢を、見ているよ。
そう言おうと、したんだ。
でも…
「恢…恢、ね…恢」
切れ長の目が歪む。
瞳が揺れて、泣いているのかと思った。
恢の両頬を掌で包む。
そこを流れていくものは無かったけど、僕には恢が泣いているように見えたから。
そうしてしまった原因は僕なんだろうけど。
それでも、恢がそんな風な顔をするのが辛い。
そっと合わせた唇から流れてくる恢の体温。
ねぇ、恢。
近くにいるのに。
こんなに近くにいるのに…


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