カイとソウ《2》
*

エアコンのリモコンを放り投げて僕の体をベッドに引き倒した。
枕に頭が沈むのと同時に床へ落ちたリモコンが音を立てる。
それには構わず僕の両頬を包んだ大きな掌。
「んっ、ぁ…待って」
噛み付かれた唇は一気に熱を孕む。
このまま加速していきそうな行為に慌てて抵抗をした。
「だめ、待たない」
すっぱり言い切ると、また噛み付かれる。
恢の歯が唇に食い込んで、そこをぬらぬらと舌が舐めていく。
正反対の感触に背中が震える。
「や…、汗かい…て」
体育祭だったから、もちろん汗をかいた。
更に片付けで埃っぽくなったし。
シュルシュルとネクタイが抜かれてベッドの下へ落とされる。
「そーたの匂いがする」
そんな言葉に羞恥で全身が熱くなる。
身悶えてしまいそうな僕には構わず、器用な右手が素早くボタンを外していく。
恢の唇が耳朶を挟む。
熱い息が流し込まれて体が震えてしまう。
濡れた舌が耳朶の裏から嬲るように舐めていく。
動く度にグチュグチュといやらしい音が頭に響く。
「…ン…ふぅ……あっ」
狭い穴に入り込む舌。
ぐるぐると旋回しながら肌を舐めていくのは…
「や、ゃあ…ああ…ぁ」
恥ずかしい格好で恢にアソコを舐めて解される時と同じ動き。
そう思ったら堪らなくて、僕の中がじんわりと濡れたような気がした。
…僕は、男なのに。
ボタンを外されて曝された腹を這う掌が熱い。
引っ掛かった臍の周りをゆっくりと辿る指。
そんなの、擽ったいだけのはずなのに…
窪みに押し込まれた指に震えた。
だって、腹の内側を撫でられたみたいだったから。
「もっ、やぁだ…やっ」
やだを繰り返しているのに恢の動きは止まらない。
いつもは僕が嫌がることなんてしないのに。
「うそつき」
きゅう、と上がった口角。
綺麗な笑みの形になった唇が近付く。
「こうされたいんでしょ?」
「ちが…ヒ、あっ」
触れた唇同士。
恢が話す度にほわほわと熱が発生する。
柔らかな感触と腰を撫で回す大きな掌。
「犯して、てカオしてるよ」
「…っ」
いやらしく笑うのに、それが息を飲むほどの色気に感じるのは僕が恢を好きだから?
動きを止めた一瞬にベルトを引き抜いて弾くようにボタンを外し、ファスナーを下げてしまう。
慌てて手を伸ばしたけど、軽く押さえて下着ごと制服のズボンが抜き取られる。
「やらしいカラダ」
全身を舐めるように見た瞳が眇られた。
赤い舌がすっと唇を舐める。
「恢の、方が…」
「やらしい?」
僕の足の間に片膝を付いて覗き込んでくる。
こういう、完全に抵抗ができない体勢は記憶に無くて恢を見た。
「……無意識とかさ、怖いな」
呟いた言葉は意味が分からない。

カチャ…

小さな音がして眼鏡が外される。
ぼやけた視界に眼鏡を置く恢が見える。
「恢」
「ん〜、なぁに?」
いつもと変わらない口調。
それに少しだけ勇気をもらう。
「ぁの…やっぱり、風呂入りたい」
「だめ」
「ど…し、て」
「わからないなら、いいよ」
優しい口調は変わらないのに、言葉はきっと辛辣。
近付いた恢の瞳は甘いのに。
噛み付かれた唇は微かな痛みを感じた。




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あきゅろす。
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