カイとソウ《2》
*


動くと鈍く走る痛み。
まるで、まだ恢を咥え込んでいるような感覚。
痛いのに幸せなんて、僕って変なのかぁ…なんて思った。
少し熱っぽい体を恢の腕に預けて、目を閉じる。
トクトクと規則正しく聞こえてくる鼓動に意識を手放した。





──────

「1年の小野?」
ぴくん、と恢の片眉が上がる。
「覚え…て、る?」
入学式の日、クラス委員は式場の片付けに駆り出された。
その時に小野に抱きつかれて…
それを見た恢が嫉妬したんだ。
「…覚えてるよ」
低い声に、そうだよねと返す。
「小野がなに?」
「クラス委員になってた」
僕にどうとかというわけでは無いんだろうけど…
「恢…こわいよ」
険しい表情は整った顔の恢がすると迫力が増す。
「……ん、ごめん」
ちゅっ…
右の目尻にキスをすると眇ていた切れ長の目が優しくなった。
「クラスは?」
そこまで見る余裕がなかった。
「わかんない…けど、委員会の後で柊先生に連れて行かれた」
少し考えるように空を見つめるとケータイを手に取る。
「恢?」
「ん…ちょっと待ってね」
ちゅっ…
唇を軽く吸い上げてからケータイを操作した。
「……詠、いま平気か?」
ケータイを耳に当てて暫く待つと弟の詠(エイ)くんの名前を呼んだ。
「聞きたいことあんだけど……ん?あぁ、まぁ…」
くしゃくしゃと長い指が髪の毛を掻き混ぜる。
「………詠のクラスに小野っている?」
恢を見つめていると笑いかけられた。
「そーた、小野の名前は?」
「雅史(マサフミ)」
「小野雅史だって………ん、そう…そっか、わかった」
そのあと、少しだけ話して通話を切った。
大きな掌に頬を包まれて顔を上げると唇が重なって軽く吸い上げた。
「小野は詠と同じクラスみたいだよ」
「詠くんと?」
「そう。担任は柊先生」
そうなんだ…
「そーた」
「ん?」
「小野と二人にならないでね」
「恢…」
「考えるだけでおかしくなりそう」
苦笑いをして僕の唇を吸い上げた。
「また、酷いことしたくないから…」
恢は僕に酷いことなんてしたことないよ。
いつも優しく抱き締めてくれる。
甘やかしてくれる。
だから首を振る。
違うよ、と。
「そーた?」
「恢の嫉妬とか、嬉しいから」
「……そーたのおばかちゃん」
「本当だもん」
頬を包む大きな掌に擦り寄って目を閉じる。
「もー…敵わないなぁ」
そっと重なる唇。
もっと欲しいから恢の唇を舐める。
小さく笑って望んだ通りのキスをしてくれた。
「あー、かわいー」
「恢?」
「もぅ、かわいーなぁ…」
ぺろりと唇を舐めると絡まる舌。
「そーたはかわいーね」



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あきゅろす。
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