カイとソウ《2》
*
触れた場所が熱い。
そこから蕩けてしまいそう。
「…ァ……ん…っ」
絡んだ舌がほどけて、またすぐに絡む。
ゆっくりとした動きに恢の首に手を回した。
だって、もっと近付きたい。
「かーわい…」
小さく笑って呟かれた言葉は恢が良く言うモノ。
何度聞いても自分には不似合いだと思うけど、でも恢がそう言ってくれるとむずむずと沸き上がるような嬉しさがある。
そんなこと、言えないけど。
恢の掌が布団と僕の背中の間に滑り込む。
そのまま抱き締められると恢に包まれてしまう。
背中から感じる恢の体温。
もっと欲しくてねだるように恢の首に回した手に力を込めた。
「ン…っん、ふ……ぁ…」
舌の裏側を根元からゆっくりと絡めるように舐め上げられて、背中をゾクゾクとした痺れが走る。
「…は……エロい顔」
そう言って舌先を硬い歯が軽く噛む。
微かな痛みと一緒に小さな快感を拾うようになったのは、恢とキスをするようになってから。
というより、きっと恢とするキスだから。
はむはむと舌を噛みながら恢の咥内に引き込まれていく。
そのままぐちゅりと絡めて吸われて、甘えるような声が漏れた。
上顎を強く撫でて、でも舌先は優しく触れる。
気持ち良くて離れたくなくて、ねだるように恢の舌を吸った。
ふ、と緩む空気。
「ん…ン……は、ァ…」
見つめた先の恢の瞳に写る自分の顔は甘えるようにどろどろに溶けている。
…好き。
恢が、好きなんだ。
その思いが溢れてしまう。
「そーた、そー…た」
僕を呼ぶ恢の声は囁くように小さいのに、じわりじわりと浸透してぐずぐずにしていく。
恢の声に反応するのは心だけじゃなくて、体も。
熱く重たくなっていく下肢。
恢の腰に擦り付けるように、少しだけ尻を上げた。
「ぁ…あン…っ」
触れた瞬間、走った痺れ。

──欲しい。

ぽかりと頭に浮かんだ言葉は口にするには羞恥が勝る。
「こら…っ」
でも尻を下げることはできなくて、硬くて熱い恢に擦り付けた。
裏筋をごりごりと擦る感覚は止まらなくて…
滲んだ視界で捉えた恢の瞳が眇られた。
「そーたっ」
背中にある掌が滑り降りて下着の中に捩じ込んで尻を掴む。
直に掴んだ尻臀を強く揉まれて腰が跳ねた。
尻の間を恢の指が撫でる。
濡らされてない指はさらさらとしていて、でもいやらしくて。
「ふ、ぁ…あぁぁ…っ」
「そんなことして、知らないよ?」
くちゅり…
耳を這う恢の舌。
それから熱い息。
「ゃ…ひぁ、あ…っ」
上から押し付けるように擦り付けられた恢の熱いモノ。
痛いくらいの刺激に先走りが溢れて下着が濡れた。
湿った音がしたような気がして体が熱くなる。
「…脱ぐよ」
そう言うと器用な手にあっという間に裸にされてしまった。
手際の良さというか、そういうのはやっぱり経験値なのかな。
「恢…」
「んー、なぁに?」
着ていたシャツをポイと放ると僕の体に腕が絡んでくる。
抱き込まれた腕の中は温かくて思わず安堵の息を吐く。
「………いつも、脱がせてたの?」
「え、なに?」
キョトンとした表情に恥ずかしくなった。
だって、そんな僕と付き合う前のことを聞いてどうするのさ。
まして、セックスに関して。
「ごめ」
「なんで?」
ちゅ、ちゅ、と額に触れる恢の唇。
「……脱がせるの、手慣れてるから…だから」
動きを止めて僕を見る瞳。
「そーぉた」
ちゅ…
頬にキスをして笑った。
「変なこと聞いて、ごめん」
自分が聞かれたら、あんまり答えたくないもんね。
恢と付き合う前の体の関係なんて。
「詠の着替えを手伝ってたからじゃないかな」
「ぇ、え?詠くん、の」
「そう。小さい頃にね、けっこう詠の面倒見てたから」
ふわりと笑ってはむりと唇に噛みついた。
「そー…なんだ」
素肌から伝わる熱は服越しよりも熱い。
でもそれが、好き。
好きだから全部欲しくなる。
「恢?」
あんなこと聞かれたのに機嫌良く笑う恢。
不思議で見つめた。
「ん…そーたがね、俺のことを気にしてくれるのが嬉しいから」
「え?」
「だってさ、俺はそーたのことが好きになって…それからずっとそーたのことを知りたくて」
掠めるように触れる唇から伝わる言葉は僕の中を満たしていく。
「そーたのことだったら何でも知りたくて」
「恢…」
「知って、悔しくなったとしても知らない方が嫌だから」
ちゅ、と啄むように軽く吸われた唇。
「だから、そーたが俺のことを知りたいと思ってくれるのは嬉しいよ」
それが例え傷付けてしまうとしても、と続いた言葉には返せなかった。
だって恢の唇が深く重なったから。
「…は……ン、ん…ぅん…ぁ…ふ」
くちゅくちゅと掻き回すように動く舌に合わせて鳴る音。
恢の舌の根元を舐めたら広い背中が震えた。
それが嬉しくて何度も舐めたら恢の大きな手が僕の頬を掴んだ。
「ぅ、んー…っ」
角度を変えた恢の顔。
目を開けて飛び込んできたのはギラギラとした瞳。
絡めた舌を強く噛んで吸い上げられた。
ヒリヒリとした痛みと、それを追いかけるように拡がる甘い痺れ。
「んっ、ン……はぁ…ぁ…か、ぃ…か…い…っ」
「は…ァ…そー…た、そーたっ」
旋回する熱に浮かされたみたいに恢に縋ってしがみつく。
その僕をきつく抱き締めてくれるから…



[*back][next#]

6/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!