カイとソウ《2》
*
バタバタと部屋まで駆け上がった。
「ぅわ…っ」
ベッドに倒されて思わず目を閉じる。
衝撃のわりに何ともないけど、驚いた。
シュ…ッ
首元を滑るネクタイの感触。
あっという間に外されたネクタイはベッドの下に落とされる。
「あっ、ぁ…待って!」
開いた首筋を恢の舌が滑る。
擽ったさと焦りで恢の肩を掴む。
「待たない」
制止の言葉なんて全く意に介さず動き回る舌。
「んっ、やぁ…ン……だって汗かいてる、からっ」
「いいよ」
そーたの匂いがする、なんて言われても!
「そーたの匂いに興奮する」
「ば、か…っ」
器用な左手だと思う。
ワイシャツのボタンの位置なんて確認しないで外していくんだから。
大きな掌が頬を包んで恢の顔が近付く。
「そーた…」
掠める息が熱くて、唇が開いてしまう。
だって、恢とキスしたい。
「我慢なんて、できない…よ」
「…ん……ぁ、んっ」
滑り込んできた恢の舌に飛び付くように絡み付く。
くちゅり、と濡れた音が部屋に響いた。



恢の舌が滑って止まる。
「ぁ…んっ、あぁ…」
軽く吸って噛みついて、また滑る。
「乳首ビンビン」
恢の整えられた爪が硬くしこった乳首を弾く。
「ひ、ぁ…っ」
跳ねた体に飛び散った透明な先走り。
「すぐこんなんなっちゃうからさ…ホント心配」
長い指が先走りを掬って舐める。
そういうの、やらしいと思う。
そう思うけど、そういう恢はゾクゾクするくらい格好良いんだ。
「そんな心配、しなくてもいいから…っ」
僕をそんな風に見るのは恢くらいなんだから。
「…知らないって怖いね」
「んっ、ぁあ…あっ」
ぎゅ、と乳首を摘まみ上げると赤い舌が舐める。
少しの痛みと舌の柔らかさにじわじわと広がるもどかしい痺れ。
「そーたはそーたが思っているよりたくさんの人が見てるよ」
それは恢と一緒にいるからじゃないの?
「だから、俺がいない時のそーたが心配」
本当は連れて行きたい、離したくない、なんて珍しく力の無い声で言うから。
恢の頭を抱き締めてさらさらとした髪の毛を撫でた。
例えば、恢以外の人が僕を見ていたとしても…
離れていても、苦しくても恢じゃないと満たされない。
「怖いんだ…」
「恢?」
「小野だけじゃない、俺が知ってるヤツも知らないヤツも…そーたを奪われたら」
「…恢」
「そーたが俺から離れたら」
「恢、ねぇ」
恢の息が胸に当たる。
唇が触れて、擽ったい。
ぎゅう、と抱き締められた。
強い力と、弱い声と、どっちも恢の姿で僕を惹き付ける。
「恢のばか…」
文句を言ったのに、出てきた声は自分でびっくりするくらい甘かった。
だって、やっぱり恢が好きだから。
離れている不安を感じているのは僕だけじゃなくて恢も同じ。
「そーた…そーた…そーた……そーた」
胸に落ちる柔らかな唇。
好き、好き、と囁いて抱き締めてキスをして…
でも、それだけじゃ一緒に生きていくことは叶わないから。
「好き…」
だけど、いま近くにいるこの時はそれだけでいっぱいになりたい。
「そーた」
「僕ね、恢が好きだよ」
「そーた」
「好きすぎて、おかしくなっちゃいそうなくらい…好き」
去年の夏の初めに芽生えた想いは膨らみ続けて、止まらない。
それを恢に見せられたらいいのに。
「そー…た」
恢の両頬を手で包んで引き寄せて目の前にある切れ長の目を見つめる。
自然に緩んでしまう顔は…置いといて。
恢の唇を舐めて、軽く吸った。
きゅう、と寄った眉間。
揺れていたはずの瞳の色が変わった。

あ、僕…食べられちゃう。




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あきゅろす。
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