カイとソウ《2》
*
恢の肩に担がれた足が揺れる。
膝が胸につくほど折り曲げられてのし掛かられて息苦しい。
でも、眇られた瞳がゆらゆらと揺れて僕を見るから。
「ゃ、あっ…そこ…ああああっ…ああ、ぁあっ!」
ただ突かれるというだけではきっと感じることないもの。
体の奥底から溶け出していくみたいな、そんな感覚。
それは怖さすら感じるもので、恢の体に縋りつく。
「そーたの、さ」
大きな掌が支えるように後頭部を包んでくれる。
だから恢の頬に頬を擦り寄せた。
そうすると伝わる温かさに少しだけ力が抜ける。
「こーいうとこがホントかわいー」
尻に感じる恢の下生え。
そんなにくっついているんだ、なんてぼんやり思う。
だって…
「…ぁ、やぁあっ!あっ、ふか…ふかぃよぉ…っ」
恢にしか届かない場所を強く拓かれて腰がぶるぶる震える。
「…ん…ぅ、ココ……好き…でしょ…っ?」
荒い息と詰まるような低い声。
普段では絶対に聞くことが出来ない声。
僕が、そんな声を、出させてる。
「ぁぁあ、あ…ンっ!やぁ…かい、かい、か…ぃ…っ」
暴れだしてしまいそうな嵐が身体中に吹き荒れて、ただもう恢に縋るしか出来なくなる。
ぎゅう、と抱きつくと恢が息を止めた。
その瞬間、弾けるように熱が広がって僕を侵していった。





──────

頭を撫でる掌の感触。
時々、指を絡めるようにして髪を整える。
倦怠感に包まれた体には毒かも。
今にも落ちてしまいそうな瞼をなんとかこじ開ける。
「そーた」
耳朶を擽る恢の吐息。
ひくり、と体の奥が疼く。
「眠くなっちゃった?」
笑ったのか小さく空気が震える。
「ちょっとだけ」
「そっか」
「ん」
恢の膝に抱き上げられた体勢は恥ずかしいけど、安心する。
だって恢の鼓動が聞こえるから。

抜かないで、なんて泣き喚いてしまった。
困ったように笑う恢に宥められて宥められて、渋々と体を離した。
泣き喚くなんて醜態を曝したから、後始末は自分でしようとしたのに…
力の抜け切った体は思うようにならなくて、結局、着替えまで恢に手伝ってもらう始末。
いやだな、もう。
そのまま抱き上げられたわけだ。
でもね、微かな空調の音と静かな空間はいやに落ち着いてしまう。
とっくに昼休みの時間を過ぎているというのにこの場所は静か。
「恢」
「なぁに?」
ちゅ、と小さなリップ音が額でする。
「…なんでもない」
「そ?」
ぐりぐり肩に頭を擦り付けた。
あやすように体を揺らされてあくびが出た。
起こしてあげるよ、なんて甘やかす声が言う。
それには首を振ってみたけど恢の掌に蕩かされた体はくにゃくにゃだ。
「だってさ」
髪の毛に柔らかな唇。
ふわふわと感じる温かな吐息。
「そーたの顔がエロいからさ」
「……な、に言ってんのっ」
「えー、今のそーたはすっごいエロエロなんだよ」
エロエロ!?
なにそれっ。
思わず顔を上げると、にやにやと笑う恢の顔。
「ばかっ!」
「いて」
ぺちん、と額を叩いたけどにやにやはそのまま。
そういう表情にすらどきどきしてしまう僕は、本当にどうしようもないくらい恢が好きなんだ。
まだネクタイを締めていない首はボタンが開いていて肌が見える。
そこに指を這わすと恢が笑う。
「かーわい…」
旋毛からちゅっちゅっと音がする。
体育が水泳の度にこんなんなのかな。
授業…受けられる自信ないかも。
「そーぉた?」
「……僕、水泳ムリかも」
「え?」
「だって、さ…毎回こんなんなっちゃったら」
困る、とは続けられなかった。
恢の唇に包まれて、軽く吸われる。
「もー…そーたは俺をどーしたいのさ〜」
すぐに離れた唇がそんなことを言って、また軽く吸う。
どうする、て…
どうもこうも。
「そんなの、僕が言いたい」
僕こそどうにかなっちゃいそうだから。
目を瞠って、それからふにゃりと笑う。
「そーた」
「うん」
「そーた好きだよ」
「…ん」
恢の背中に手を回してぎゅうぎゅう抱き締めたら、恢も僕の背中に手を回してぎゅうぎゅう抱き締めた。



[*back]

8/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!