カイとソウ《2》
*

水着、タオル…
「え、と…」
いつものバッグの隣に体育の準備。
水泳は可もなく不可もなく。
人並みには泳げるレベル。
まあ、スポーツ全般がそうなんだけど。
「あ」
そっか…
水着…恢も着るんだよね。
当たり前のことを忘れていた。
「……平気かなぁ」
恢の肌を見て、いつも通りでいられるのかな。
ちょっと…
いや、かなり不安。
去年は平気だったよね。
すごく、驚いたんだけど。
綺麗に全身を覆う筋肉。
恢が動く度に形を変えて。
「なるべく見ないようにしよ…」






──────

朝のHRで紺野先生から4時間目の体育に遅れないようにという注意があった。
男子の授業がプールと聞いて、女子が騒ぐ。
内緒話は聞こえないようにしてよ…
「箏くん、シワ」
石崎の人差し指が眉間を指す。
「………」
「ま、わからんでもない」
ある意味セクハラだな、と苦笑いをしている。
「恢は?」
「廊下。紺野先生と話してる」
「そっか…」
頬杖をついて石崎を見る。
「あーゆーのって、言われてる本人としてはどうなの?」
覗きに行っちゃう!?とか、触っちゃう!?とか…
そういう直接的なものから、まあ色々。
恢もだけど石崎も対象だからね。
「微妙な気分」
「…だよね」
肌を露出して見せたい人なら嬉しいのかも、だけど。
「恢も別に喜んでないぞ」
「うん」
「というか、完全に無かったことにしてるな」
「ぷ…っ」
吹き出すと、石崎も笑う。
「ま、箏くんは違う意味で気を付けろよ〜」
にやにや笑う。
「自信無い…」
「え?」
「…え?」
「え、箏くん…え!マジで!?」
「ゃ、ちが…!というかなにっ」
「そーかぁ…箏くんでもそういうコト考えるのか〜」
やっぱり男だね!、なんて明るく言い放たれて机に突っ伏した。
くしゃり、と髪の毛を掻き混ぜられて顔を上げると恢が居る。
「そーた?」
不思議そうな顔をして首を傾げる。
「…なんでもない」
見つめていると恥ずかしくなってくるから目を逸らす。
逸らした先にゲラゲラ笑う石崎の姿。
「恢!恢!」
「なに」
怪訝な顔した恢が石崎に向き直る。
「恢、良かったな〜!箏くんが」
「いいいいしざきっ!!」
遮る為に慌てて立ち上がると椅子が大きな音を立てて倒れた。
「そーた?」
その椅子をガタガタ直しながら首を振る。
「ちが…、なんでもないからっ!」
まだ笑う石崎を睨んでから恢を見た。
眉間にくっきりとしたシワを作ってるのを見て、なにか誤解したかもと思ったけど。
「ホント、なんでもないから」
「………そう?」
あー…もう。
石崎はドンマイドンマイとか言ってるし。
「恢」
「んー…?」
シャツの袖を握ると小さく溜め息を吐くと頭を撫でてくれた。
「潤也」
「おー、なんだよ」
先ほどよりは大分マシになったけど、まだにやけてるし…
「…ぃ、でーっ!」
恢の隣に来た途端、ゲンコツで頭を叩かれた。
鈍い音がした頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまう。
「恢っ、この…っ」
涙の浮かぶ目尻に、相当な痛みだったことが分かる。
「そーた」
「ぅ、え…」
「潤也に近付いたらダメだよ」
「え、えと」
「ね、そーた」
にっこり笑ったのに目は怖いよ!
思わずコクコク頷くと、いいこと頭を撫でた。
「俺はスルーかよ!」
「うるせー」
恢に噛み付く石崎はまだ頭を摩っている。
うん、あれはかなり痛そうだった…




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