カイとソウ《2》
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──────

冷えたシーツの上に指を這わせて枕の下に突っ込んでいるケータイ掴む。
たったそれだけの動作。
なのに、重くだるい体にはちょっとした労働に感じた。
「…ぃ……た…っ」
ズキンと痛んだのは体の奥と腰と足と…
「ぜんぶ、いたい…」
声を上げすぎた喉もじりじりと痛む。
血が出たのかどうかも分からないけど、使いすぎたソコはまだ恢を咥えこんだまま開いてるみたい。
視線を動かすけど恢の姿がない。
温もりを探したくて体を起こすために肘をついた。
「い…っ」
思わず顔を歪めて動きを止めた。
ドアの開く音がした。
「おはよう、そーた」
「恢…」
「つらいでしょ」
そう言うと僕の体を支えてくれた。
「ありが、と」
顎を掴まれて顔を上げる。
「…ん……ふ、ン」
合わさった唇から冷たい水が流し込まれた。
冷たくて美味しい…
もっと欲しくて恢の唇を舐めた。
「かーわい…」
そう呟くとまた水を含んで唇を合わせる。
「…ふ…ぅん、ん」
恢の唇が上顎を撫でると、甘えた声が漏れてしまう。
「おいしー」
「ん、俺もおいしーよ」
「なに?」
小さく笑うとリップ音をさせて鼻先にキスをした。
そういう仕草って、きっと僕がしてもただ恥ずかしいだけだよね。
「そーたの唇、柔らかくておいしーよ」
「……ばか」
また笑うと僕の体を横にする。
鈍い痛みに息を詰めた。
「学校は休みね」
サラリと言って隣に滑り込んできた。
「え…?」
「ん?俺、言ったでしょ…そーたを閉じ込める、て」
「本気…だったの?」
「まあね。少なくとも痛みが引くまでは俺の傍に居なくちゃだめ」
まだ服を着ていない僕の背中を大きな掌が滑る。
その温かさが心地好くて目を閉じた。
「……無防備」
少しだけ低くなった声に目を開ける。
「なに?」
「ホント、そーたのそういう所が心配」
「意味わかんないよ」
「外ではしちゃだめだよ」
「…わかんないのにだめって言われても」
眉間に寄ったシワを長い指が撫でる。
「まぁ、かわいー所でもあるんだけどね〜」
「だから、わかんないってば」
ちゅっと眉間を吸われる。
「あ、でさ連絡しといたから」
「えと、なにが?」
「欠席の連絡」
「あ…ありがと」
ん?あれ?
恢も休むの?
準備を始める気配の無い恢をじっと見つめる。
「そーぉた、そんなに熱い目で見ないでよ〜」
だらしなく笑う恢の頬を摘まんだ。
「恢は?」
「俺も休み」
当たり前のように言うけどさ…
「だめ」
「なんで?」
「だって…っ」
だって、これから撮影で休んだりするのに…
「あのね、そーた」
溜め息を吐くと長い指が髪の毛を掻き混ぜる。
「俺の中での優先順位はそーたが一番なの」
ゆっくりと髪の毛を梳く動きが気持ち良くて摺り寄った。
「そーたが居なかったらなんの意味も無いんだ」
「恢…」
額に唇の感触。
目の前にある唇が弧を描く。
「それに、そーた動けないでしょ」
「…ばかっ」
その、いやらしく笑った顔をぺちんと叩いた。




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あきゅろす。
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