(・ω・´)カレシャツ




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落ち着き無くパタパタと動く体。
何かあったのかと思ったけど、不安定でも悩んでいる風でも無くて。
なんなんだ?
首を傾げながら風呂場へ向かった。
ゆっくり湯船に浸かってからシャワーを頭に被っていると磨りガラスのドア越しに智尋の気配。
使った布巾でも置きに来たんだろうけど…
小さな音をさせて、まるで気付かれたくないみたい。
無くなった気配に、また首を傾げた。





智尋の部屋のドアは少しだけ立て付けが悪いのか、開閉の時に小さな音がする。
それもピッタリ閉まっている時だけ。
今は指が通せるくらいの隙間があって、部屋の明かりが漏れる。
あと、智尋の声。
牧田辺りと電話でもしてるのかと思った。
だから音がしないようにそっと開く。
ベッドへうつ伏せで寝っ転がる姿はかなり無防備。
それから…
「たかや」
小さな甘えた声で俺を呼ぶ。
智尋の金色に見える髪がふわふわと揺れて、足がパタパタと布団を蹴る。
智尋の腕がしっかりと抱き締めている黒いもの。
それに埋まった顔は見えないけど赤く染まった耳朶が見える。
何を大事そうに…
「ちー?」
「たっ、たたたたたかや…っ」
がばっ、と起き上がると真っ赤な顔でその黒いものを隠した。
「た、多すぎ」
「ゃ、あ、あの!」
うつ伏せからワタワタと体を反転させて俺の方を向く。
背中に隠された黒いものは尻の辺りから覗いてるけど。
「……それ」
「あっ、お風呂早かったね!」
「そうか?」
「うん!うん!」
ベッドへ近付くとますます慌てるように後ずさる。
「智尋」
「うんっ、なーに?」
首を傾げて笑ったけど、少し引き顰ってるぞ。
「……」
顎を捕まえて引き寄せると唇が開いた。
噛み合わせるみたいに唇を合わせて咥内を一周、ぐるりと舐める。
「ン、ぁ…んっ」
上顎を撫でてやったら智尋の肩が震えた。
後頭部を支えてやってもう少し上を向かせる。
「それ、何だ」
抱き寄せた体の下から引っ張り出したもの。
「だだだだだだだめーっ」
智尋の肩越しに在ったのは風呂に入る前に脱いだ自分のセーターだった。
「は、あ?」
たぶん、今まで見たなかで一番素早く動いた智尋は黒のセーターをあっという間に背後へ隠した。
「見ちゃだめ…っ」
熟れたイチゴみたいに真っ赤になった頬。
美味そうな頬を撫でて、それから軽く噛みつく。
「ふえっ!?」
間抜けな声と真ん丸に開かれた目。
「イチゴみてぇだな」
「なんで!?」
「んー?真っ赤だし」
指で触れた頬はいつもよりだいぶ熱い。
「甘い匂いがして美味そう」
ばかー、と緩い抗議の声を上げて首に飛び付いてきた。
ベッドへ乗り上げて、ついでに智尋を膝に乗せる。
智尋の尻の下に隠されていた黒のセーター。
くしゃりと丸まったそれを持ち上げて智尋の頭に乗せてやった。
「で。これは何だ?」
頭にセーターを乗せたままぎゅうぎゅう抱きつく。
………まあ、聞かなくてもだいたい想像できるけど。


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