(・ω・´)カレシャツ
隆哉と智尋の場合


「ふくかいちょー、質問です」
「うん?」
体育が終わって着替えたふくかいちょーはいつも通りピシリとした佇まい。
そのふくかいちょーの席の前に陣取って質問タイム。
あ、ちなみにまきちゃんは担任の先生に呼ばれてるのだ。
「あのねー…」
ドキドキと鼓動が早くなるのは恥ずかしいことを質問する自覚があるから。
「好きな人の服……着たこと、ある?」
「……………え?」
ぱちり、と瞬きをして丸くなったふくかいちょーの目。
「ぇーと、あの…っ」
恥ずかしい自覚があるのに、この反応は更に恥ずかしさを煽るよ!
「羽鳥は、会長の…服を着たい…の?」
呟くような小さな声だったけど、内容をしっかり確認するもので思わず机に突っ伏した。
「羽鳥?」
「ぅ〜…そうだよぅ」
隆哉の着ている服って自分の物よりも大きいんだよ。
それを着たらどんな感じかなー、なんて思ったんだけど。
「意外」
「…ふくかいちょー?」
「だって、会長は羽鳥の家に泊まったりするでしょ」
「うん、するよー」
「その時に着たりとか…」
「ないもん」
そう。
ないんですよ。
隆哉が泊まりに来る時は着替えを持ってくるし。
「…………頼めば喜んで貸すと思うけど」
鼻の下伸ばして、と付け足されて苦笑い。
そんな気はするけど、そこはやっぱり恥ずかしさが勝つわけですよ。
「ふくかいちょーなら、どうする?」
そう尋ねたら、少し首を傾げて笑った。
「こっそり着てみる…かな?」
「こっそり」
「お風呂の間とかね」
「ぁ…あー、そっかぁ!」
こっそりは名案かもしれない。
ふくかいちょーに相談して良かった!
「今度のお泊まりの時にしてみるね!!」
ありがとー、とお礼を言ったらにっこり笑顔が返ってきた。






──────

それで、ふくかいちょーに相談してからなかなかお泊まりが実現しなくて。
もう単純に隆哉が忙しかったから。
久しぶりのお泊まりでいつもの3割増しウキウキしながら、食事の支度を手伝って。
町内会の集会という名の飲み会へ出掛けるおじさんとおばさんを見送った。
「隆哉、お風呂入ったら?」
「そうだな」
頷くと着替えを準備して風呂場へ行った。
「……よしっ」
大急ぎで食器を片付ける。
濡れた布巾を掴んで風呂場のある洗面所へ。
抜き足差し足、なんて忍者みたい。
とにかく物音がしないように、気配がしないように。
シャワーの音がする。
これならバレない!
洗濯機の上に置かれていた黒のセーターを掴んでパパッと退散した。


大急ぎで戻った自室。
「…持ってきちゃったぁ」
ベッドに広げたセーターはやっぱり大きくて…
その上へ重なるようにうつ伏せで寝っ転がってみる。
「手ぇながーい」
袖口は手首を越えて掌の真ん中。
「隆哉の匂いだぁ」
ぐりぐりと鼻を擦り付けるようにすると、まるで隆哉に抱き締められてるみたい。
緩んでいるだろう頬は誰も見てないから放置。
セーターの柔らかな感触に鼓動が早くなっていく。
「しあわせー…」
零れた声は頬よりも緩みきっていた。



☆☆☆☆


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