(・ω・´)カレシャツ
詠と慶一郎の場合



──2月


3年生が自由登校になって、いつもより校内は静か。
3年生の教室がある階を通る。
「……がんばれよー」
息が詰まりそうな緊張に包まれているだろう生徒たち。
出来る限り、希望する進路に決定してほしい。
子どもと大人の狭間にある3年間は長くて短い。
そこから巣立とうとする姿は逞しくて眩しい。
ここでそれを見送ることを選んだけれど、慣れることのない寂寥感。
「さて、と」
巣立つ力を蓄える為にあと2年の猶予がある1年生。
今朝も元気に登校してくるかな。
大きく伸びをして、深呼吸。
今日も元気にいきましょうか。






──────


朝入れた気合いが保ったのは昼休み前まで。
「ぁー…ヤバイなぁ」
背中を中心にゾクゾクとした寒気。
全身にだるさが回らないだけマシか?
マスクあったかな。
生活指導室にある引き出しの中身を思い浮かべる。
3年生のように受験ではないけど、他学年は定期試験がある。
しかも学年末だ。
風邪なんかひいて、うつすわけにはいかない。
取り合えず奏は新倉の家に泊まらせて。
それから…
「大丈夫、大丈夫」
呪文のように呟いて、生活指導室の鍵を開けた。



ひんやりとした室内に身震いしながら置いていたブランケットを肩に掛けた。
それから熱々のコーヒーを淹れた。
「あー…」
体の芯が冷えているような感覚が消えなくて、机に突っ伏した。
午後の授業はない。
放課後に会議はない。
今日までの提出書類は朝出した。
早退、しようかな…
「でもなぁ」
踏み切れないのは、放課後に訪ねて来るヤツがいるかもしれないから。
もしここに来て気持ちが楽になるなら、話を聞きたいから。
高校時代の自分がそうだったように。
「薬、貰うかぁ」
重くなり始めた体を起こして保健室へ内線を掛けた。

すぐに現れた飯島先生から長くて深い溜め息を貰いつつ受け取った風邪薬。
早く帰るように注意を受けて頷いたけど…
「むり」
薬のお陰かだいぶ寒気は治まったけどとんでもない眠気。
ダメだと思いながら、飛んでいってしまいそうな意識。





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あきゅろす。
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