愛及屋烏 5 魔法薬学の授業では、頭冴え薬の実習を行い、シズクはユーリアとペアになり黙々と材料を刻み、すり潰した。 「シズク、ここは右に3回でいいのかしら?」 「教科書はそれで合ってるけど、ここは3回半のが綺麗な色が出るわ」 「わぁ…ほんとね」 これは、母とセブルスの教えの賜物である。 「うん。良い色ね…匂いも大丈夫そうだわ」 瓶に移し、蓋をするとラベルを貼って提出をした。 「Ms.ミズナミ。この後残りたまえ」 「は、はい」 怒っているのかという冷たい声に、背筋がピンっと張るが、スネイプ先生だからかと思い直し席に戻った。 「シズク、何か言われたの?」 今日のシズクが伝えた訂正部分を、教科書に書き込み終えたユーリアにコソッと聞かれた。 「ええ、この後残るようにって…」 ひそひそと伝えた後、授業が終わり人がいなくなるまで席で待つと立ち上がった。 「スネイプ先生。何かありましたか?」 「来い」 目線だけで手招きされ、薬草の保管庫に連れてかれた。 「ここにあった材料が無くなっている…」 「これって…」 「愛の妙薬…もしくは、恋の秘薬に使われる材料だ」 「誰かに盗まれたのですか?」 「左様」 あっさりとしたセブルスの肯定にシズクは、目を見開いた。 「犯人は…目星は付いているのですか?」 「魔法の痕跡を調べたが、出てこないようなのですな」 セブルスにそこまで言われ、シズクは何故この場に呼ばれたのかを理解した。 「分かりました。影で追跡します。何日前に無くなったのですか?」 「新学期の初日だ」 「なるほど…やってみます」 影を操るイメージを浮かべ詠唱した。 「影よ。我が主の問いかけに答え、姿を指し示せ」 影が消え、姿を消した。 「それは何の呪文だ?」 「お祖母様に教えていただいた、影の使い方です。セブルスの部屋の一帯は全て私の影のテリトリーですから、直ぐ分かると思います。分かり次第報告致しますね」 ニッコリとシズクが微笑みかければ、セブルスは眉間に皺を寄せた。 「気をつけたまえ。相手はこの材料を使う為に盗んだ筈だ」 「大丈夫ですよ。こんなお子様相手にされませんよ」 ブンブンと手を横に振ったが、セブルスは怪訝な顔でシズクを一瞥した後、フンッと視線を逸らした。 「何かあれば呼ぶんですな」 「ご心配ありがとうございます」 ペコリと頭を下げ、その場を後にした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |