「ただいまー」
誰もいない部屋に入り、暖炉を開けた。
「シズク様。アネモネさんがお会いしたいそうです」
ダークが影から現れ、シズクに伝えた。
「アネモネさんってお父様の同僚の方だったわね…いいわ。お会いします。日にちを決めてくださいと伝えてくれる?」
「了承しました」
スッとダークは影に消えた。
「よし、気分転換にお菓子作りでもしようかしら」
またこっそり、ダドリーの元へ持っていくのもアリかもしれない。
「ハリーに早く会いたいな…」
テキパキと手を動かし、牛乳プリンと、マカロンを焼いていた。
「ふふっ、マカロン見てるとセブルスに貰ったのを思い出すわ」
1人で思い出し笑いをしていると、暖炉からセブルスが出てきた。
「こないだの話の続きを聞きにきた」
ダイニングテーブルの椅子に座ったセブルスに紅茶と、牛乳プリンを出した。
「何だ?この白い食べ物は」
「牛乳プリンですよ?食べたことないですか?」
ニッコリ笑ってスプーンを差し出すと、少し躊躇いながらも口に含んだ。
「牛乳だな…」
「あははっ!」
セブルスの率直な感想に笑い転げていると、咳払いが聞こえ、真剣な顔をしたセブルスと目があった。
「シズク。何を企んでいる?」
「企む?人聞き悪いですねぇ…」
困ったように眉をハの字に下げた。
「昔と同じだ。こんなに目の下に隈を作ってまで…何をしている?」
セブルスがシズクに近寄り、顎に手をあてグイッと顔を上げた。
「…まだ、秘密です」
セブルスの漆黒の瞳に吸い込まれて、本当のことを話してしまいそうになりながらも、シズクはジッと目を見つめ返した。
「私には言えない話なのか?」
セブルスが素のまま話してることに気付き、シズクは思わず目を伏せた。
「セブルス。私は…どうしても護りたいものがある…。それが、年を追うごとに段々増えていくの」
ユーリア、マシュー、デビット、オリバー、パーシー、フレッド、ジョージ、セドリック。
沢山の人と知り合ってしまった。
それ以外にも、アルバス、ミネルバ、シリウス、リーマス、そして、セブルス。
この中の6人も亡くなることを知ってるのはシズクだけなのだ。
「そうか」
「もちろん、あなたもよ?セブルス…」
セブルスの手が顎から外れ、シズクが手を伸ばしてセブルスの頬を両手で包み込んだ。
「私は護れられるほど落ちぶれてはいない」
「ふふっ、そうね。セブルスは強いもの」
この愛が少しでも伝わればいいと、思いながらも、リリーへのセブルスの真っ直ぐな愛を思い出し胸を密かに痛めるのであった。
「そんなに菓子ばかり作ってどうするのだね?」
いつもの調子に戻ったセブルスにネチネチと攻撃されながらも、和やかなひと時を過ごすのだった。