翌朝から、シズクは出来る限りユーリアの元を離れないよう行動をしていた。
時折、マシューからの視線を感じるものの、近付いてくる気配は無かった。
クィディッチの練習にも付いて行っていた為、キャプテンからシーカーになれと勧誘を受けた程であった。
「シズク、ありがとう」
「感謝されるようなこと、してないよ?」
ニコニコとシズクが微笑めば、ユーリアは何かを決意したように手を握った。
「私、マシューと話してくるよ」
「ユーリア…」
「このままじゃ、前に進めないし、マシューもきっと私の態度に傷ついてると思うから…」
「…ユーリアが決めたなら、何かあったら直ぐに呼んでね」
ユーリアのブレスレットに保護魔法を強めにかけ、シズクは送り出した。
「とはいえ…気になるもの、ごめんね。ユーリア…」
影の力を使い、ユーリアとマシューのブレスレットから映像を読み取った。
「マシュー…話があるの」
「あぁ、行くよ」
空き教室に入り、2人は向かい合っていた。
「私…マシューのこと大好きよ…お友達として」
「俺は…ユーリアのこと、友達としてじゃなく、好きだった」
マシューの言葉に、ユーリアと映像を見ていたシズクが目を見開いた。
「そ、そんなの全然知らなかった」
「ユーリアには気付かれないようにしてたし…今回のことでよく分かったよ。悪かった…」
頭を下げたマシューに、ユーリアは首を振った。
「私も、ちゃんと気付けなくてごめんなさい。本当に…ごめんなさい」
涙を溜めて謝るユーリアに、マシューはデコピンした。
「お前が謝ることなんてないんだ。俺が勝手にユーリアを好きになって、勝手にキスしただけだから」
「マシュー…」
「前の通りって、訳には行かないかもしれないけど…さ」
ポンと肩を叩いて、マシューは空き教室を後にした。
2人の仲違いは終わったかなように見えたが、それからは4人で集まることも減っていった。
「シズク!なんだか、久しぶりだね…」
デビットに図書室で会い、2人は近況報告をしていた。
「デビット、マシューはどう?」
「うーん、空元気って感じかな?あの2人お似合いだと思ったんだけどなぁ…」
「そうねぇ…」
そんな事を考えながら、季節は春を迎え、3年になって増えた選択授業の課題に精を出していた。