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愛及屋烏
17






その日から、夜はセブルスが夕食を食べに来る為、シズクは買い出しに来ていた。



「おや、可愛いお嬢さんお使いかい?」


黒髪は目立つのか、前世で言う八百屋のおじ様や、肉屋のおば様方に声を掛けられていた。



「えぇ、お買い物です。ここのお野菜は新鮮でとても綺麗ですね!」


ニコニコと愛想笑いをするシズクに気を良くしたのか、おじ様方は沢山おまけをしてくれた。



「そちらのお肉を頂けますか?」


「お嬢ちゃんにはサービスだよ!」


揚げたてのコロッケも頂き、もぐもぐと租借しながら帰ると、アイスが帰って来ていた。



「あら、アイスお帰りなさい」

『ユーリアからお手紙ヨー』


くるりと一周し、シズクの手の上に手紙を落とした。


「来週から、お泊まりに来てって書いてあるわ!」


『来週からは、手紙はユーリアの家に運べばいいのネー』


「そうね。そうしてくれると助かるわ」


お水とナッツを用意し、アイスは器用にナッツを半分に割って食べていた。



「さて、今夜はご馳走だわ」


来週までに材料を使い切らなくてはと考えながら、ユーリアのお宅へのお土産も考えていた。


「お菓子と、何か手土産が必要よね…純血主義だし、希少価値の高いものかしら?」


うーん?と首を捻りながら考えていたが、答えが出なかったため、セブルスに相談することにした。



「今日はローストビーフと、コンスープとピラフにサラダ…なんか統一感無いかな?」


デザートには、ワインゼリーにしてみた。


「うーん、美味しい」


味見もして、仕度をしてセブルスを待っていると、いつものように暖炉から出て来た。



「こんばんは」


「…随分作りましたな」


ダイニングのテーブルの上には綺麗に盛り付けられた夕食の数々があった。


「来週から、ユーリアのお宅に行くことになりまして…新学期までそちらに」

「そうか。我輩も丁度来週から帰省する予定であったのでな」


セブルスが帰省…スピナーズエンドに!?


お宅へお邪魔したい衝動を堪え、それぞれの夏休みの予定を話した。




「ユーリアのお宅へお土産を持っていこうと思うのですが、何が宜しいでしょうか?」


シズクの質問に少し考えるような動作をしたのち、口を開いた。


「菓子でも作っていけばいいのではないかね?」


「それはもちろん、作るつもりです!」


「それと、お酒でも持っていたらどうかね?Ms.パーキンソンの父君は酒豪だったはずだが…」


「お酒ですか…なるほど!ありがとうございます」



手土産も決まり、夕食をペロリと平らげ、デザートのワインゼリーを食べていた。



「ご馳走様でした」



シズクが手を合わせ呟くと、セブルスが怪訝な顔をした。



「それはなんなんだね?」

「ぁあ、日本という国の習慣ですよ。全ての生き物に感謝をするという意味が込められています。私の父の血筋には日本の家系も入ってますので、この黒髪もそうですね」


まさか、前世の癖でうっかり言ってしまったとは言えないため、それらしく誤魔化しておいた。




「日本か、奥ゆかしい国だな」


「日本の文化は感銘を受けることが多いんです」



シズクの1つ1つの所作にも日本特有の柔らかい動きや、丁寧な仕草が出ているのだが、本人は気付いていなかった。




翌朝、セブルスに付き添い姿くらましをしてもらい、ユーリアの家の前に来た。



「セブルス、送って下さってありがとうございます」


「精々楽しんできたまえ」




ユーリアに会う前にセブルスはポンッと音を立てて消えた。




「よし…」


大きめのトランクと鳥かご。家に買い置きをしていた少しお高いワインを手土産に、薔薇の形をしたアップルパイも焼いてきた。




「シズク!いらっしゃい」


ユーリアと、ユーリアの妹だと思われる子に出迎えられた。


「ユーリア、お招き頂きありがとう」


「貴方がシズクね。娘から話はよく聞いてるわ」


ユーリアのお母様はとても綺麗なかたでした。



「初めまして、シズク・ミズナミと申します。この度はお招き頂き光栄です。こちら、つまらないものですが、お召し上がり頂ければと存じます」


ニッコリと笑みを浮かべ、優雅にお辞儀をした。



「ふふ、ありがとう。頂くわ」



お母様にワインとアップルパイをお渡しし、ユーリアに誘導されるがままに、お部屋に案内された。



「シズク、紹介するわ。この子は私の妹のパンジーよ」


ユーリアのブロンドとは対照的に、黒髪に黒の瞳の女の子だった。
華奢で可愛らしい女の子で、ユーリアの後ろにコッソリ隠れているのもまた、愛らしく感じた。



「初めまして、シズク・ミズナミです。パンジーよろしくね?」


手を差し出すと、おずおずと握ってくれた。




「可愛い…私も妹が欲しかったわ!」


思わずパンジーを抱きしめると顔を真っ赤にしてシズクの腕の中で固まっていた。



「あら、パンジーばかりズルいわ!私も!」



3人でハグ大会が行われ、のんびりとしたひと時を過ごした。















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あきゅろす。
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