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愛及屋烏
13






「さすがに埃っぽいわ…」



影を動かしながら部屋の換気を行い、暖炉を開けた。



「さて、クリスマスの準備をしようかしら」


クリスマスツリーを飾っていると、後ろから慣れた気配を感じた。



「またクリスマスツリーかね。毎年飽きないことだ」



いつ間に来たのか、セブルスがツリーを一瞥しソファーに座った。



「セブルスはクリスマス、好きじゃないんですか?」


「騒がしいのは好かぬ」


「ふふっ、私は騒がしいのも、こうして静かにツリーを眺めてるのもどっちも好きですよ」



キラキラと輝くツリーを眺めながら、暫しの沈黙を楽しんだ。




「そういえば、今年はルシウスさんのクリスマスパーティーに…」


「聞いている。ルシウスのパーティーであろう?我輩も来るように手紙が来た」



根回しもルシウスのが上手だったようだ。


「エスコート宜しくお願いしますね」

「精々着飾るんですな」


皮肉めいた言葉も、ニコニコしているシズクには通用せず、クリスマスパーティーを思うと頭が痛くなるセブルスだった。



「去年、セブルスが買ってくださったドレスがまた着れるので嬉しいです」


「去年のものなぞ、もう入らないと思いますがね」



セブルスの言葉に、シズクはギョッとした顔で自室へ駆け出した。



「…本当だ…閉まらない」


身長も一年で伸び、胸元も成長したのか、後ろのファスナーが上がらなかった。



「子供の一年の成長を考えれば当然だろう」


何度もシズクの身体を見ている為、容易に推測できたことだったが、シズクは地面に倒れ嘆いていた。



「セブルスに貰ったのに…グスッ…一回しか着てないのにあんまりです…ッ」



泣き出すシズクを宥め、新しいドレス買い与えたセブルスも、大概シズクに甘いと自嘲するのであった。



「わぁ…素敵」


緑のスリザリンカラーのドレスに身を纏ったシズクは、ご機嫌でクリスマスパーティー当日を迎えた。



「髪の毛出来た。バックもあるし、靴も用意した。ドレスも着替えたし、ショールも羽織った」



最後にアルバスから貰った人魚の涙のネックレスと、セブルスに貰ったブレスレットを付けた。





「皆からのクリスマスプレゼントは帰ってきたから開けるけど、セブルスのだけ先に見てみようかな」



白の箱に黒いリボンの箱を開けると、青色の液体の入った瓶が入っていた。



「ん…?何かしら?新しい薬?」


そっとフタを開けるとスプレーのように吹きかけるタイプのものになっていた。



「んー?何かに吹きかけるもの?何だろ?」


試しにハンカチに吹きかけ、匂いを嗅ぐとシャボンのいい香りがした。



「…まさか!ウソでしょ…あのセブルスが…!?」



呆然と驚いていると、後ろから声がした。



「我輩が何だね?」


「せ、セブルス…コレ…その///」


シズクが手にしているボトルを見て、大袈裟に舌打ちをした。



「チッ…たまたま出来たものだ。有り難く使いたまえ」



たまたま出来たものがシズクの目の色と同じスカイブルーの色になる訳がないと、魔法薬学好きのシズクには分かっていた。

わざわざ、セブルスがシズクのためにこのパフュームを作ってくれたことが嬉しくて、手首につけた。



「セブルス、どうですか?」


ドレスや、髪型の感想が欲しくてくるっとその場で一回転すると、ポンポンと頭を撫でられ、姿くらましでマルフォイ邸に向かった。


セブルスの格好はいつもと違い、髪も軽くセットされておりエスコートされる度にドキドキと胸が高鳴った。



「シズク!まってたぞ!」

「ドラコ!お招きありがとう」



ドラコとナルシッサと話していると、いつの間にかセブルスを見失った。



「シズク!」

「ユーリア!」


ユーリアとマシューに会い、2人と話しているとクイクイと袖を引かれた。



「シズク、ぼくと、おどってください!」


ルシウスに教わったのか、まだ初々しい動作でドラコに誘われ、ワルツを楽しんでいると、貴婦人に囲まれて眉間の皺を増やしているセブルスと目が合った。



「ドラコ、とても素敵だったわ。ありがとう」



ワルツを踊り終えると、ユーリアにドラコを任せ、セブルスの元へ急いだ。



「君、そこの君だよ」


早足で会場を歩いていると、見知らぬ男性に呼び止められた。


「わ、私ですか…?」


先を急いでいたが、呼び止められた手前、にこやかな顔を作って振り向いた。



「なんて美しいんだ…」


「へ…?」


勝手に手を取り図々しく近付いてくる男性に嫌悪感を露わにしながらも、ルシウスの顔に泥を塗るわけにはいかないと、上手く交わしていた。


「わたくしなど、まだまだ未熟者ですわ。ご婦人達がお待ちではなくて?」


「いやいや、ボクは君しかもう見えないよ!その漆黒の髪も麗しいスカイブルーの瞳も…この芳しい香りも全てがボクを引きつけるのさ」


強烈な褒め言葉にタジタジになっていると、グイッと腕を引かれた。



「失礼。私の連れに何か?」


セブルスの香りに包まれ、抱きしめられるように守られた。


学校等で使っている我輩ではなく、私と言っていたことにシズクは同時に驚いていた。



「…セ…」


名前を呼ぼうとすると、人差し指で口に手を当てられ、優雅にその場所を後にした。













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あきゅろす。
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