愛及屋烏 17 「失礼しまーす」 事実からバスルームを通ってセブルスの私室に入ると、ソファーでうたた寝をしている黒い塊を見つけた。 「…お疲れなのね…」 ローブを脱ぎ、セブルスにかけ寝顔を見つめてクスッと笑ってしまった。 「…ッ…リリー…」 寝言を聞いてしまい、どんな夢を見ているのか想像がつき、足が止まった。 左手で胸を押さえ俯き、ゆっくり深呼吸をした。 「…分かって…、る…分かってるから…」 嗚咽を零しそうになるのを我慢し、目尻に溜まった、涙を拭いて辺りを見回すと、シズクに頼む筈だったであろう明日の教材が並んでいた。 「私は…、貴方を救ってみせる…。絶対に…」 小さな声で呟き、明日の準備をテキパキと終わらせ、もう一度セブルスの寝顔を見つめ、自室へ戻った。 「…苦しい…苦しいよ…ッ」 布団に顔を埋めて涙を流した。 声を抑え、流れる涙は枯れることなく流れ続けた。 こんなにも想うのは何故なのか…。 先のためには…今、歩みを止められないことは明白で、この胸の苦しみを吐き出す術は見つからなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |