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ひとつなぎの願い
双子岬の灯台守
「ここが世界で一番偉大な海・・・グランドラインか!!!」
「「行けーっ!!!」」

メリー号は頂上から偉大なる航路へ下り再び雲の中へと入る。

「ひゃっほー!最高だぜ!!」
「うほぉ!!!」
「きゃほー!!」

――ブオオオオオ・・・!!!

『?何の音だろう?』
「ん?」

ティティは不思議な音に周囲を見回すが真っ白で何も見えず、其の声を拾ったゾロも耳を澄まし周りを窺う。

『ねぇ!何か聞こえない!?』
「(確かに・・・)おい何か聞こえたか?」
「え!?なに!!」
「変な音しねーか!?」
「風の音じゃない?変わった地形が多いのよ、きっと」
『なんだ、風の音か・・・』
「ん?何だありゃァ・・・」

ナミの答えにティティは肩の力を抜いたのも束の間、狙撃手の目が何かを捕える。

「ナミさん!!前方に山が見えるぜ!!」
「山?そんなハズないわよ!」
「でも確かにあるぜ!」
「知るかァ!!行けェェェ!!!」
「この先の“双子岬”を越えたら海だらけのはずだもの!!!」
「ん?」

サンジとナミのやり取りを気にせず叫ぶルフィだったがルフィも前方にある“何か”を捉えた。

「山じゃねぇ!!?」
「黒い壁だ!!!」
「違うわコレって・・・!!」
「じゃあ何だよ!!?」
「ク、クジラだァ!!!」
『クジラ!?クジラってこんなに大きいものだっけ!!?』

雲を抜けた先に立ちはだかる黒い塊に慌てふためく一味。

「どどどどうする!!?」
「戦うか?」
「バカね!戦えるレベルじゃないでしょ!!?」
「でででも進路を塞がれてるぞ!!どうすんだよォォ!!!」

どんどん迫ってくる巨大な鯨。

「ちょっと待て、ここまで近づくとただの壁だ!!!まず目はどこだよ!!」
『上に口があるから、多分横!!見えてないんだよ私達の事!!!』
「そっか、向こうが私達に気付いてるとは限らない!!」
「でもこのままじゃぶつかるぜ!」

サンジ、ティティの言葉にハッとするナミしかし状況は変わらず焦るゾロは活路を見出す。

「おい、左へ抜けられるぞ!とり舵だァ!!とり舵いっぱぁい!!!」
「って、舵折れてるよ!!!」
「何とかしろ、俺も手伝う!!!ティティ、頼む!!!」
『もう、魔法だって万能じゃないんだよ!!?』

ゾロ、ティティ、サンジは折れた舵を抱えるウソップの元へと駆け寄る。

「そうだ いいこと考えた!!!」
「ルフィ!?」

船内へ入るルフィにナミは思わず声を掛けるが迫り来る恐怖に動く事が出来ない。

『ウソップ!折れた断面を合わせて!!』
「こ、こうか!!?」
『ちょっと荒いけど勘弁してね!!ウッド!!!』

折れた舵を根元に合わせティティが其れに杖を振るうと根元から上へと木の蔓が伸び折れ目に絡みつきくっ付く。

「「「おおぉぉぉ!!!」」」
『応急処置だからすぐ折れるかもしれないけどそれより今は・・・!!』
「取り舵っ取り舵ィ〜〜〜〜〜っ!!!」

ティティによって直された舵を四人係りで左へと傾けるが強い波に揉まれ舵が利かない。

「ぬぅぅぁぁああ!!ダメだぁ曲がんねぇぇ!!」
「諦めんなァァ!!ぬぅぅ!!」
「ぬうあぁ!!」
『くぅぅ!!』

船首と鯨の距離がもう無い。

――ドウン!!

「「「「『!!!?』」」」」

爆音と前へと進む勢いを殺す反動に全員床に絡まるように倒れた。

「よしっ!!船止まったか!?」

全員が唖然とする中陽気な声が船内に響き全員状況を把握した、船長が鯨に向かって大砲を放ったのだと。

「最・・・悪・・・・・・死んだかも」
「!!!?・・・・・・・・・俺の特等席っ!!!」

ナミの小さな呟きの後に甲板に落ちた船首を目撃したルフィの声に身を起こした操舵室の四人は息を呑む。

「「「『・・・・・・っ!』」」」

予想に反し反応を示さない鯨に好機と、素早くオールを出し四人がかりで漕ぎ鯨の脇を目指す。

「に、逃げろ!今の内だァ!!!」
「何だ一体 どうなったんだ!!?」
「体がデカ過ぎて砲撃に気付いてねェのか!!?それともトロいだけか!!」
『何で動かないの!?実は作り物!!?』
「知るか!!とにかく今の内だ!!!」

――ブオオオオオ!!!

「ぬぅぉぉ!!耳が痛てェェ!!!」
『うわぁん!作り物って言ったの怒ってるの!!?』
「どーでもイイだろ!!ごげェ・・・とにかく漕げェェ!!」
「コイツから離れるんだ!!!」

間近で鳴かれ耳に響く声にティティはオールから手を離しそうに成るも堪え漕ぎ続けるも、一人の男の行動が其れを無に帰す。

「お前、俺の特等席に・・・一体何してくれてんだァ!!!!」

――ドゴォン!!

「な・・・!!」
「「「『アホ―――っ!!!』」」」

鯨の眼球をおもいっきり殴ったルフィに全員涙を流し固まると丸々とした黒目がメリー号へと向けられる。

「「『こっち見たァ〜〜〜っ!!!』」」
「どうだ!!かかって来いコノヤロォ!!!」
「「てめぇ もう黙れ!!!」」

拳を構えるルフィをゾロとウソップが蹴飛ばすがもう遅い怒りの声を上げた鯨はメリー号を勢いよく吸い込もうと大きな口を開き胃袋への入り口を作り出した。

「うわああああああ!!!」
「「ルフィ!!!」」」」

大きな揺れに耐えられずルフィは船から振り落とされナミとサンジの呼び声が響くがティティは其のまま船ごと鯨に呑まれてしまう。



―――
――



「どう思う?」

ナミの問いかけに。

「どう思うって・・・・・・」
「どう思えばいいんだよ・・・」
「・・・・・・・・・」(ぱくぱく)
『・・・・・・』

自分達の眼前に広がる光景に全員目を瞬かせる。

「俺はてっきりクジラに飲み込まれたつもりでいたが・・・」

サンジの言葉に皆僅かに頷くも目の前に広がるのは見慣れた青い空とぽつりと浮かぶ二つの小さな孤島。

「こりゃあ 夢か・・・!?」
「ああ、多分夢だ・・・」
「・・・で?あの島と家は何なの?」
「・・・・・・・・・幻だろ」

ウソップの夢か現かの問いにもナミの確認も全否定するゾロ。

『現実見ようよゾロ、私達は寝てもいないし、幻術にも掛かってない!現実だよ・・・』

ティティの言葉と共に大きなイカが五人の前に現れた。

「「・・・・・・大王イカだ!!!」」

ナミとウソップは飛びはねティティの腰にしがみ付きティティ、ゾロ、サンジは構えるが孤島から勢いよく三つの巨大な銛が大王イカを貫き水飛沫を上げ倒れる。

『っ!』
「うおっ!?ティティ!!?」
「ちょっ!?どうしたの!!?」

目の前で散った血飛沫にティティはしがみ付いていたウソップとナミに支えられ座り込む。

『大丈夫・・・血を見て力が抜けただけ・・・』
「見るのもダメなのか・・・」
「んなんでやって行けるのか?」
『近かったからだし、不意だったから・・・次は気を付けるよ』

血の気の失せた顔でサンジとゾロの言葉に頬を膨らますティティに大丈夫だろうと安堵し再び視線を目の前の島に移す。

「まァ、ティティはおいといて・・・此処、人は居るみてぇだな」
「人だといいな」

銛のロープの先にある家を睨み付けるゾロとサンジ。

「もうイヤ 帰りたい…」
「ルフィもどっか行っちゃったし、どうなるんだよ・・・」
「そういえばルフィは!?」
『クジラに食べられる前に船から落ちたのは見えたけど・・・』
「私も見たけど・・・まさか海に!!?」
「はっ!撃つか!!あの島 一発大砲でドカーンと・・・!!」

船長の安否を気を向けるが大王イカがゆっくりと島へ引きずられウソップは慌ててティティから離れ立ち上がる。

「ちょっと待て! 誰か出てきた・・・」
「ティティ立てる?」
『うん、ありがとうナミ』

ウソップを諌めたサンジの言葉にナミも立ち上がりティティに手を貸し家から出て来る影を窺う。

「っ・・・花だ!!」
「花!?」
「違う・・・人か」

家から現れたのは奇抜な髪形の老人。

「何だアイツ・・・?」
「あんなおじいさんが大王イカを一撃で・・・?」
「ただな漁か・・・それとも俺達を助けてくれたのか・・・」

老人の高圧的な視線に全員言葉無く老人を見つめる、老人は一味から視線を外さず歩き出す。

「・・・・・・」
「「「「『っ・・・』」」」」
「・・・・・・・・・」
「「「「『・・・・・・』」」」」

しかし何も言わずに椅子に腰かけ新聞を開き其方に視線を落とす。

「なんか言えよてめェ!!!」

全員の思いがサンジの一言に凝縮され老人は視線を再び一味に向ける。

「戦るならやるぞこの野郎!!こっちには大砲があるんだ!!!」
「(ギン!)」

ドン
ドンッ
ドンッ!
ドンッ!!
ドンッ!!!
ドーンッ!!!!

「・・・・・・やめておけ、死人が出るぞ」

長い沈黙と共に放たれた言葉にナミとウソップは再びティティに抱きつく。

「!!・・・へェ誰が死ぬって?」
「私だ」
「お前かよ!!!」

サンジの挑発的な言葉に即答する老人。

「この――・・・!」
「まァ熱くなるな・・・」
「ナメやがって・・・あんにゃろう」
「おい、じいさん・・・教えてくれ此処は何処で、アンタは何者なんだ?」

いきり立つサンジを宥め代わりに問い掛けるゾロ。

「(ギン!)」

ドン
ドンッ
ドンッ!
ドンッ!!
ドンッ!!!
ドーンッ!!!!

「・・・・・・人に質問する時は、まず自分から名乗るのが礼儀ってもんじゃないのか?」
「ああ・・・まァそりゃあそうだ、悪かった俺の名はロロノア――・・・」
「私の名はクロッカス双子岬の灯台守をやっている、歳は71歳双子座のAB型だ」
「あいつ斬っていいか!!!」
「まァ落ち着け!」

淡々と答えるクロッカスにゾロの手は刀に行くが先ほどとは逆にサンジが其れを宥める。

「ここがどこかだと?お前らよくも私のワンマンリゾートにはいりこんで、そんなデカい口がたたけるもんだな・・・ここがネズミの腹の中に見えるか!?」
「やっぱりクジラに食われたんだ・・・でも、ココがクジラの胃の中なのか!!?」
『確かに見渡す限り青空・・・』

クロッカスの言葉に食べられた現実を確信しウソップとティティは上空を仰ぎ見る。

「ちょっと待ってよ!!どうなんの私達!!?消化されるなんて嫌よ!!!」
「(ギン!)」

ドン
ドンッ
ドンッ!
ドンッ!!
ドンッ!!!
ドーンッ!!!!

「「いや、それはもうイイって!!!」」
「繰り返しのギャグってのを知らんのか?」
「「「「『ギャグかい!!!』」」」」
「出口ならあそこだ」
「「「「『出られんのかよっ!!!』」」」」

クロッカスの指示した先には巨大な鉄の扉。

「ちょっと待ってよ・・・なんでクジラの腹に出口があんのよ・・・何で空に扉が!!?」
「イヤ、ちょっと待て・・・よく見ろよ・・・空も、雲も、カモメさんも・・・こりゃ絵だ!クジラの胃袋の中に絵が描いてあるんだ!!!」
「は!?」
『これ絵なの!?全部!!?』

ナミの戸惑いの声に目を細め空を見上げるウソップの言葉にナミとティティは驚く。

「医者の遊び心だ!」
「テメー一体ココで何やってんだ!!?」
「もう良い、関わるな・・・」

飄々と言ってのけるクロッカスに突っ込むウソップをゾロは制止する。

「同感だ!」
『恐ろしくマイペースなおじいさんだね・・・』
「ナミ、出口があるんださっさと出よう」
「そうね・・・」

サンジもティティもクロッカスから視線を外しゾロの言葉にナミも指示を出そうとすると、阻むかのように轟音と共に胃液が波打ち船は激しく揺れる。

「始めたか・・・」
「見て!!あれ島じゃないわ、船よ!しかも鉄でできてる!!」
「そりゃそうか、この海は胃液なんだもんな!」
「長居してると木の船じゃ溶けちまうってことか・・・」
『え!?それじゃメリー号もヤバイじゃん!!』
「あぁ、だから早く此処から――・・・」
「おーい!!何を始めたんだ!説明しろ!?」
「っおい・・・」

脱出を促すゾロの言葉を無視しウソップは状況を知ろうとクロッカスへ声を張り上げ訊ねる。

「このクジラが・・・ラブーンがレッドラインに頭をぶつけ始めたのだ・・・」
「「何!!?」」

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あきゅろす。
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