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ひとつなぎの願い
赤い土の大陸
「しまった・・・カームベルトにはいっちゃった!」
「カームベルト?」
「何だそりゃ?」

焦るナミだがウソップとルフィは聞き覚えのない言葉に首を傾げる。

「お、向こうはまだ嵐だこっちは風もねェのにな」
『風もない・・・っ!!?』

自分の居る場所とはまるで正反対の光景にルフィは珍しと眺めティティはカームベルトの恐ろしさを思い出し冷や汗を流す。

「あんた達のん気なこと言ってないで早く帆をたたんで船を漕いで嵐の軌道に戻すの!!!」
「はーい、ナミさん!!」
「何あわててんだよお前・・・漕ぐってこれ帆船だぞ?」
「そーだよ、何でまたわざわざ嵐の中へ・・・」

瞬時に反応するサンジと違いゾロとウソップは眉を寄せる、船の周囲を気にしティティは舳先で海面を覗き込む。

「いいから言うことを聞け!!」
「せっかくこんなに晴れてんのに…」
「じゃあ説明してあげるわよ!!今この船はあんたがさっき言った通り南へ流れちゃったの!!」
「へェじゃあ…グランドラインへ入ったのか?」
「それができたら誰でもやってるわよ!!!」

動こうとしないルフィ達にナミは声を荒げるばかり。

「グランドラインはさらに二本の海域にはさみ込まれて流れているの!!それがこの無風の海域カームベルト!!!」
『この海域は風も吹かないし海流も無い、完全に凪の状態の海域なの』
「っ!?ティティ!分かってくれてるのね!!」
『私元々グランドラインの人間だからね・・・数百年のブランクが有るといっても世界の形までは変わってないから・・・』
「とにかく!帆で風を受けて走る帆船には危険極まりないまさに致命的な場所なわけ!!ルフィ、理解できた!?」
「あぁ!大変な事だけは・・・」
「そう、思ったより伝わってよかったわ・・・」

周囲を警戒するティティに焦りを思い出し早口で自身の船長に説明するナミ。

「ジジィが言ってた危ねェってのはこの事か?」
「凪(カーム)ね・・・どうりでさっきから風がねェ」
「船が動かなきゃどうしようもないもんな・・・」
「風が吹くまで待てばイイじゃん!」
「だから!!この海域に入ったら最後!いくら待っても風は吹かないの!!それだけじゃないの!この海域が危険だって言われてるのにはもう一つ理由があるのよ!!この海域には・・・――」

サンジ、ゾロ、ウソップも状況を理解したのか納得するも呑気に待とうとするルフィにナミは再び怒鳴るが言い終える事無くナミの不安要素が船を大きく揺らす。

「うわっ何だ何だ地震か!?」
「バカここは海だぞ」
『来るよ、いっぱい!』
「〜〜〜〜っ!!!」

自分の傍に来たティティにしがみ付くナミ、男達は状況が分からずせり上がってくる海面で揺れる船から落ちないようバランスを取る。

『っ!!』
「!!!?」
「・・・・・・・・・・・・!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!(ブクブクブク・・・)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

治まった揺れだが海面に姿を現した巨大な海王類の軍勢に大きく口を開け固まった。
メリー号は一匹の海王類の頭上、安心できる場所ではなく涙を流ししがみ付くナミをそのままにティティは杖を構え海王類を警戒する。

「カームベルトは海王類の巣なの・・・大型のね・・・カームベルトを越せないのはコイツらの所為でもあるのよ・・・」

全員息を殺し海王類の動向を窺う。

「どーすんだよこの状況・・・」
「と、とりあえず皆動くなよ・・・!!いずれ海中へ戻るだろうから、そしたら・・・思いっきりオールで漕ぐんだ!!」
「「お・・・おう!!!」」
「マジかよ!!!?」
「バカ!」
「・・・ごめん・・・」
「・・・・・・ンニッ・・・!!」
『っ!?』

ウソップの大声に反応したのかと杖を持つ手に力を込めるティティ。

「ッキシ!!!」

しかし杞憂に終わり海王類はただクシャミをしただけしかし巨体でのクシャミはメリー号に大きな影響を与えた。

「「なにいいい〜〜〜〜〜〜っ!!!?」」
「ティティ!何とかメリー号を嵐の所まで飛ばせない!!?」
『やってみる!!皆しっかり掴まってて!!!(メリー号ごとの転移は危険・・・それなら)』

ナミに言われ魔法を使おうと周囲に文字を展開させるティティ、しかしクシャミによって飛ばされたメリー号を餌とでも思ったのかカエル姿の海王類が飛び掛かってくる。

「わ!!カエルが飛んで来たぞ!!」
「振り落とされるなぁ!!」
「ウソップが落ちたーっ!!」
「ウソップーっ!!!」

全員船体にしがみ付いてる中振り落とされ巨大なカエルに食われそうになったウソップにルフィは全力で腕を伸ばし捕える、目の端で其れを捕えたティティは杖を大きく振りかぶる。

『(加減して・・・帆が破れないように、だけど嵐の所まで飛べ!!)エアロ!!!』
「「うおおおっ!!」」

風の勢いも加わりメリー号は再び嵐の中へ戻った。

「よかった・・・ただの大嵐に戻った・・・」
『心臓に悪いよ・・・』
「全くだ・・・」

嵐の海へと戻り、驚異の体験をした全員がぐったりし体重を他所へ預けていると、ナミが思い付いたように体を起こす。

「わかった・・・・・・」
「・・・何が?」

首だけを其方に向けゾロはナミに訊ねる。

「やっぱり山を登るんだわ」
「お前まだ言ってんのかそんなこと言ってんのか?」
「コレを見て・・・」

冷静さを取り戻したナミの頭は冴え渡り、再び地図を広げ気を失ったままのウソップを放置したまま説明を始める。

「導きの灯が差してたのは間違いなくここ・・・レッドラインにあるリヴァース・マウンテン
ココに運河があるでしょ?四つの海の大きな海流が全てこの山に向かって流れてるとしたら・・・」
『そっか、それなら四つの海流は傾斜を無視して運河を駆け上がり頂上でぶつかってグランドラインへそのまま流れる!』
「さすがティティ、理解が早い!
リヴァース・マウンテンは冬島だからぶつかった海流は表層から深層へもぐる・・・
誤って運河に入りそこなえばゴーイングメリー号はレッドラインの岸壁にぶつかって船は大破!海の藻屑ってわけ・・・わかる?」

ナミの説明に素早く理解したティティの言葉にナミは補足を加える。

「・・・・・・よーするに、不思議山か!!はっはっはっは」
「あー・・・分かんないでしょうけど・・・とにかく、もうこの船は海流に乗っちゃってるから舵取りさえ間違えなけりゃ、リバースマウンテンの頂まで一気に登れるはずよ・・・」

理解してない事がよく分かるルフィを尻目に告げるナミ。

「ナミさん すげーぜ!」
「聞いたことねぇな、船で山越えなんて」
「俺は 少しあるぞ」
「不思議山の話か?」
「いや・・・“グランドライン”に向かった奴らは、入る前に半分死ぬと聞いた・・・簡単には入れねぇとわかってたさ」

ナミを絶賛していたサンジはゾロの言葉に笑みを浮かべルフィの問いに静かに答えた。

―――
――


「おーい!!不思議山が見えたぞ!!!」
「待て!!その後ろの影は何だ!?」

目的の山を見つけたルフィの声で意識を取り戻したのか視界に入った巨大な存在に声を上げる。

『初めて見た・・・あれが世界を別つ赤い土の大陸・・・“レッドライン”!!』
「ばかデケー・・・」
「グランドラインの入り口・・・」
「あれがレッドラインか!!」
「雲でてっぺんが見えねぇ!!!」

天へと伸びるその巨大さに感嘆の声を漏らしていると船は海流の流れで赤い土の大陸に吸い寄せられていく。

「吸い込まれるぞ!!!舵しっかり取れ!!!」
「「まかせろォ!!!」」

ルフィの掛け声にサンジとウソップは船首と同じ羊形の舵をしっかり握る。

「ナミ!!入り口は何処だ!?このまま行くと崖にぶつかっちまうぞ!!!」
「ん・・・?あの崖のひび割れ・・・」

ルフィの声にナミは赤い土の大陸を目を凝らして視ると目的のものを見つけた。

「ナミ!どーすんだ!!?」
「このまま直進して!!」
「マジっすか!?」
「いいから!」

前方から目を離さずウソップに指示を出すナミの横にルフィが飛んできた。

「ナミ!アレが運河の入り口か?」
「恐らくね!」
『大丈夫・・・見えたよ運河の入り口!!』
「ウソみてぇだ・・・本当に海が山を登ってやがる・・・」

双眼鏡を手にしているティティとゾロが入り口を視認する。

「あの水門をうまく潜り抜けるのよ・・・でないと船がバラバラになっちゃうからね!!」
「ずれてるぞ!!もうちょっと 右!!右!!」

ナミ達も目視すると激昂を飛ばす。

「右!!?おもかじだァ!!」
「おらァア〜〜〜っ!!!」

ルフィの声にウソップとサンジは思いっきり舵を右に引く、しかし激しい流れの海流に耐えられなくなった舵は激しい音を立て根元から折れてしまう。

「「「『舵が!!!?』」」」

重なるルフィ、ゾロ、ナミ、ティティの声は空しく波にのまれ、舵の利かなくなったメリー号は水門の支柱へとその船首が向けられる。

「ゴムゴムの・・・・・・」

ルフィは帽子を素早くゾロに投げ進行方向へ走り出し、支柱と船の間に飛び込んだ。

「風船っ!!!」

膨らんだルフィを緩衝剤に船は水門の中へと跳ね除けられ、運河に乗った。

「ルフィ!!!掴まれ!!!」
「ぬ!!!」

メリー号から焦ったゾロの声にルフィは手を伸ばし其の手を互いに掴み、メリー号の甲板へと戻ってきたルフィに全員笑みを零し喜びの声を上げた。

「「入ったぁーっ!!!」」
「これで・・・あとは一気に頂上よ!!!」

肩を組み喜び踊るウソップとサンジ、レインコートを脱ぎ風を浴びるナミ、甲板から船首へ移動するルフィ、喜び笑いあうティティとゾロはハイタッチ。

「おおっ雲の中に入った!!!」

運河は雲の中へと続き暗い中を進むと今度は海にも負けない青い空が顔を見せる。

「すげー!!雲の上に出ちまったぞ!!!」
「見て!頂上よ!!頂上だわ!!!」
『・・・綺麗!!』

四つの海流がぶつかり合う頂から降る水飛沫は太陽の光で七色に輝いて見えた。
流れに乗ったまま今度は山を下り始め全員眼前の“偉大なる航路”へ想いを馳せる。

「(ミホークが居る・・・)」

白い刀を強く握りしめ大剣豪を目指して

「(オールブルーがそこに・・・)」

口角を上げズボンにしまった手を強く握りしめ

「(完璧なる海図を・・・)」

左腕の入れ墨に触れながら

「(勇敢なる海の戦士の証を!!)」

笑顔で長い鼻を擦り

『(この海の何処かに・・・皆が居る!)』

胸の上で強く拳を握りしめ

「おお見えたぞ、ココが世界で一番偉大な海グランドライン!!!この先の何処かにワンピースがあるんだ!!!!」

ルフィ達は“偉大なる航路”へと入った。


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