ひとつなぎの願い 海賊歓迎の町、出航 「なっはっはっはっはっはっはっはっは・・・」 リリィの話とゾロの言い訳を聞いたルフィは盛大に笑った。 「なーんだ早く言えよ〜〜っ!!俺はてっきりあのもてなし料理に好物がなかったから怒ってあいつらを斬ったのかと思ったよ〜っ!!」 「てめェと一緒にすんな!!!」 《ふふふっ》 「あっはっはっはっはっは!!まー気にすんなよ・・・」 「そこ、うるさい!!」 ナミに一喝され三人は押し黙る。 「っとまぁ・・・そんなトコ・・・その報酬として10億ベリーいただきたいの!コイツらの強さ見たでしょ?悪い話じゃないと思うけど・・・」 「それはムリ!!助けてくれたことにはお礼をいうわありがとう」 「なんで?王女なんでしょ!?10億ぐらい・・・」 即答され困惑するナミにビビは訊ねる。 「・・・・・・・・・アラバスタという国を知ってる?」 「ううん聞いたこともない」 「有数の文明国と称される平和な王国だった・・・昔はね」 「昔は?今は?」 「内乱の真っただ中よ・・・ここ数年民衆の間に革命の動きが現れ始めたの、民衆は暴動をおこし、国は乱れに乱れている・・・そんなある時聞こえて来た組織の名がB.W!!!」 怒りの籠った顔に四人はビビの言葉に耳を傾ける。 「その集団の工作で民衆がそそのかされてる事が分かったの・・・でもそれ以上の情報となると一切が閉ざされていて手を出す事も出来ない!そこで小さい頃から私の世話を焼いてくれていたイガラムに頼んだの」 「ちくわのおっさんか?」 「ちくっ!?ぇ、えぇ・・・そう・・・なんとかB.Wに潜入できないものかと・・・そうすれば黒幕の情報と、その目的が見えてくるはずだから」 「随分と威勢のいい王女だな・・・で?連中の目的とやらは掴めたのか?」 「うん・・・」 ルフィに一瞬口を滑らすが再び言葉を紡ぎゾロの問いに頷くビビ。 「“理想国家の建国”」 「え!!?」 「イガラムさんはそう言ってたけど・・・ぁ、もしかして」 ビビの表情に違和感を覚えナミは考えを改める。 「そう・・・理想国家の建国とか言ってるけど、そんなのは大嘘・・・真の狙いはアラバスタ王国の乗っ取りだった!!」 《・・・っ》 リリィは眉を寄せる。 「早く国に帰って真実を伝え、国民の暴動を抑えなきゃ!このままでは、このままでは・・・」 「なるほどね、そういうことか・・・これでやっと話がつながった、内乱中ならお金もないか」 興味を失い肩を落とすナミとは裏腹にルフィは話しに食いつく。 「おい、黒幕って誰なんだ?」 「ボスの正体!!?それは聞かない方がいいわ!!」 「お前知ってんだろ?」 「聞かないで!!それだけは言えないっ!!あなた達も命を狙われることになる!!!」 ルフィの問いにビビは聞かない方がいいと止めた… 「ははっそれはごめんだわ、なんたって一国を乗っ取ろうなんて奴だもん・・・きっととんでもなくヤバイ奴に決まってるわ!!」 「ええそうよ!いくらあなた達が強くても勝てる訳ない!!あの王下七武海の一人クロコダイルには!!!」 「「「《・・・・・・》」」」 勢いからの言葉に一同言葉を失う。 「誰だって?」 「「・・・っ!!!」」 「言ってんじゃねーか」 《・・・あの、上に何か・・・》 「「「え?」」」 「?」 リリィの言葉に三人は上を見上げビビも皆に倣って見上げると一羽と一匹と目が合い彼らアンラッキーズは空へ飛び立つ。 「ちょっと何なの!!?今の鳥とラッコ!!!!あんたが今私達に秘密を喋ったって事報告に行ったんじゃないの!?どうなの!!?」 「ほ、ほんとにごめんなさいっ!!!つい口が滑っちゃって・・・」 「ついで済む問題か!!その一言で何で私達まで道づれにされなきゃなんないの!!!」 胸ぐらを掴み泣き喚くナミにひたすら謝り続けるビビ。 「七ブカイだってよおい!!」 「悪くねェな」 《彼らは強いですよ、何で喜ぶんですか?》 「そりゃぁお前!強い奴と会ったら嬉しぃだろ!!」 《そうですか?命を狙われるんですよ?》 「戦う事に意味があんだよ」 「あぁ・・・グランドラインに入ったとたん七武海に命を狙われるなんてあんまりよ!!」 クロコダイルの名を聞き、嬉々と話すルフィ達の後ろで嘆くナミに構う事は無かった。 「さっそく会えるとは運がいいぜ」 「どんな奴だろうなー」 「黙れそこ!!!短い間でしたけどお世話になりました!!」 リリィ達に背を向けナミは足早に歩き出す。 「おいどこ行くんだナミ?」 「顔はバレてないもん!!逃げる!」 いきり立つナミの目の前にアンラッキーズが現れラッコが手にしていたスケッチブックをナミに見せる。 「わっうまーい」 ナミ達四人の似顔絵、あまりの上手さに拍手を送ったナミを確認し再び空に舞い上がるアンラッキーズ。 「これで逃げ場もないってわけね!!!!!」 ・・・とっ涙ながらに戻って来る。 「ご、ごめんなさい・・・」 「おもしろいなーあいつ」 「そもそもどこへ逃げる気だったんだ?」 《なんだかナミが不憫に思えてきました・・・》 「リリィ――!!!」 涙を浮かべナミはリリィに泣きつく。 「・・・・・・・・・とりあえず、これでおれ達は四人もバロックワークスの抹殺リストに追加されちまったわけだ」 「なんかぞくぞくするなー!!」 歯を見せるほどに笑う二人に言葉に成らない声を上げるナミの頭をリリィは撫でる、 《ナミ、そんなに落ち込まないでください》 「だって!だって、アイツら!!あんな・・・・・・・・・!!!」 「わ、私の貯金50万ベリーくらいなら・・・」 リリィに抱きつき暗雲を背負うナミを必死に励まそうとするビビの背から声が掛かる。 「ご安心なされいっ!!!」 「「「《!?》」」」 「ダイ゙・・・ゴホッ!!マ〜ママ〜〜〜♪大丈夫!!!私に策がある!!!」 ビビと同じ格好をし人形を四体抱えたイガラムだったにナミ以外の四人が振り返る。 「イガラム!!その格好は!?」 「うはーっおっさんウケるぞそれ絶対!!」 《女装・・・というかそのは恰好ビビのつもり、なのでしょうか?》 「もうっ、ばかばっかり・・・」 ビビ、ルフィ、リリィに続きナミも首を擡げながら呟く。 「いいですかよく聞いて下さい、B.Wの情報網にかかれば今すぐにでも追っ手はやってきます・・・ましてやボスの正体を知ったとなれば・・・分かりますね?」 「千人くらいの追手が来るという事ね」 「ひぃ!!?」 其の言葉に勢いよく振り返りリリィに更に強くしがみ付くナミ。 「そしてこの様に、私が王女に成りすまし、更に四人分のダミー人形を連れて一直線にアラバスタへと舵をとります」 「コレがオレ達?」 「囮か・・・」 《そのクオリティで果たして囮として役立つのでしょうか・・・》 「お前も結構言うな・・・」 如何にも急拵えの粗末な人形と変装に不満を漏らすルフィとリリィ。 「追手が私に気を取られている隙に、ビビ様はみなさんと通常航路でアラバスタへ・・・」 「ちょっと待った!!!王女を送ってくって誰が言ったの!?契約はまだ成立してないわ・・・」 イガラムの言葉に慌てて立ち上がりふら付きながら歩み寄るナミにリリィも四人の元に歩み寄る。 「王女を送ってく?なんだそれ」 「リリィの話聞いてなかったのか?このとっつぁんがこいつをウチまで送ってくれとよ」 今まで座っていたゾロも立ち上がり刀を差し直しながらルフィに答える。 「あそういう話だったのかいいぞ」 「ぇ!?」 「クロコダイルが追って来るっつってんのよ!!!」 あっさり了承するルフィにビビとナミは驚きの声を出す。 「クロコダイルってそんなに強いのか?」 《もちろん、七武海は海軍の力を誇示するものですから、かなり強いです》 「奴も今は七武海の一人、合法的に認められた海賊なので賞金は懸かっていませんが、かつて懸けられていた賞金額は8千万ベリー」 「ほう・・・」 「8千万ってアーロンの四倍じゃないのよ断んなさい!!!」 ルフィに答えたイガラムの言葉に関心するゾロと涙し震え上がるナミ。 「行ってくださいますか?」 「あぁ・・・面白そうだしな!!」 「感謝いたします!」 船長の言葉に了承せざるを得ず、思わず頭を抱えるナミに苦笑し目を合わせ不敵に笑うリリィとゾロ。 「マ〜ママ〜〜〜♪では、わたくしビビはココから行きますわ」 「あっはっはっ!おっさん!スゲーそっくり!!」 「誰にだよ・・・」 港にある一隻の船の前で別れを惜しむ面々。 「では王女“永久指針‐エターナルポース‐”を私に・・・」 「・・・!?エターナルポース?」 後方で待機していたナミが耳慣れない言葉に反応する。 「ん?ご存知ないか?言ってみればログポースの永久保存版・・・ログポースが常に次の島次の島へと船を導くのに対し、永久の指針は一度記憶させた島の磁力を決して忘れず、たとえどこへ行こうとも永久にその島のみを指し続けるのです・・・そしてこれはアラバスタの地の磁力を記憶したもの」 「・・・これで、あなたはアラバスタへ」 「ビビ様はいくつかの島を経由してアラバスタを目指してください・・・私も通ったことはありませんが、ログを二、三たどれば着く筈です」 迷う素振り見せるもビビはイガラムに木製の枠に縁取られた特殊な永久指針を差し出し、イガラムはしっかりと受け取る。 「では・・・王女をよろしくお願いします」 「あぁ!」 「イガラム・・・」 「過酷な旅になると思いますが、道中気を付けて・・・」 「イガっ・・・・・・あなたも!」 「無事に、祖国で会いましょう」 二人は笑顔で握手を交わしイガラムはそのまま船に乗り込み出航した。 「・・・・・・行っちまった最後までおもろいおっさんだったなー」 「あれで結構頼りになるの」 小さくなっていく船影から目を離さずにビビは薄く笑うと皆つられ、笑みを浮かべ船を見送る。 カッ・・・ドォオオン!!! 轟音と共に今まで見送っていた船が炎上し、其の形を消失させる。 「っ!!?」 「!!!」 《なっ!!?》 「そんな、馬鹿な!!!もう追手が!!?」 驚き唖然とする一同。 「立派だった!!!!」 爆風で飛ばされた麦藁帽を被り直し声と共にルフィは走り出し三人は我に返る。 「ナミ!!ログは!?」 「だ、大丈夫もうたまってる!」 《先に行きます!!》 「あぁ!俺も直ぐ行く!!そいつを連れて来い船を出す!!」 「うん!!」 ルフィ、リリィに続きゾロ、ナミも動く。 「ルフィ、ウソップ達を連れて来い!俺とリリィは船に・・・!!!」 「まかせろ!!!」 ゾロの声に応える様に走る方向を変えたルフィにリリィは迂闊な自分に思わず間抜けな声を上げた。 《ぁ、》 「どうしたリリィ」 《ゾロ!手を!!》 「?」 走りながら差し出された手を掴むと次の瞬間ゴーイングメリー号の甲板の上に居た。 「クェエエ!!?」 「なっ!?」 《この方が早かったです・・・ゾロ!早く出航準備を!!》 「ぉ、おう!!(魔法か?)」 リリィに促されるままに手早く出航準備を始める、横で震えるカルガモは放置。 「連れてきた!!」 「乗れ!いつでも出せるぞ」 「あれっ?こいつらまだ寝てるよ」 「・・・・・・」 碇を上げたゾロは顔をルフィ達へと向けるとルフィに引き面れ地面に倒れている二人に頬を引き攣らせる。 《ルフィ!手伝いますから早く二人を船に・・・》 「おう!」 甲板から飛び降りルフィの前に降りて来たリリィと共に気絶しているウソップとサンジを担ぐと・・・ 「探してるヒマなんてないわよ!」 「けどココに置いて行く訳には・・・」 ナミとビビが何やら揉めながら港で足を止めている。 「どうした!?」 「カルガモが居ないんだって!!」 「あぁ?」 「指笛で来るはずなのに来ないの!!」 じれったくなり問い掛け返って来た答えにゾロは横目で目標を一瞥すると指さし。 「コイツか?」 「「ソコか!!!」」 「俺達より先に来てたぞ」 そう、リリィの瞬間移動の魔法で一時硬直してはいたが、このカルガモ・カルーはゾロ達よりも先に乗船していたのだ。 「河を進むと主流があるわ、少しでも早く航路に乗れる!」 憂いの無くなったビビの行動は早く、縄梯子で甲板に上がり全員の乗船を確認するとナミの指示で帆を張る。 「おい!」 「・・・!?Mr.ブシドウ?」 帆を張り進み出すとゾロがビビに歩み寄り訊ねる。 「いったいどれくらいの追手が来てやがんだ?」 「わからない、B.Wの社員は総勢2千人いて、ウイスキーピークの様な町がこの付近にいくつかあると聞いているけど・・・」 「まさか、ホントに千人も・・・!?」 ビビの言葉にナミの顔が引き攣る。 「ぁ?あれ!?」 「おい!船が出てるぜ!?」 「やっとお目覚めね・・・」 「待ってくれよもう一晩くらい泊まってこうぜ!!」 「そうだぜ!!!」 「楽しい町だし女の子刃可愛いしよォ!!!」 「こんなイイ思い今度はいつできるかわかんねーぞ!!?」 「ゆったり行こうぜ!!俺達は海賊なんだから!!!」 「まだ朝にもなってねーしよ!!」 目覚めと共に騒ぎ出すサンジとウソップにナミの拳が頭に落とされた。 「何にもしらねーでアイツら・・・」 《二人は現状を理解出来ていませんからね・・・》 「おいナミ、アイツらに説明を――・・・」 「うん、してきた」 「早ェな」 「めんどくさいトコ省いたから」 ナミの暴挙を目撃した者はおらず感嘆の声だけが漏れる。 「そろそろ島を抜けられるはず・・・」 「すげぇ・・・霧が出てきた!」 「もうすぐ朝ね・・・」 霧が発生し、周囲が次第に明るく成るのを眺めながらビビ、ルフィ、ナミは前方に意識を向ける。 「あぁ、追ってから逃げられてよかった・・・」 「ホントよねぇ」 「船を岩場にぶつけないように気をつけなきゃね・・・」 「任せときなさい!・・・って、今のルフィ?」 「んにゃ?」 状況に沿った言葉に返したナミは聞き慣れない声に隣のルフィに訊ねるも首を振られ背後に目を向ける。 「いい船ね」 「「《!!?》」」 「な!!!誰だ!!!?」 「っ・・・あんたは!!」 船の手すりに腰かける人物に全員目を瞠る。 「さっき、そこでMr.8に会ったわよ?ミス・ウェンズデー・・・」 「まさか・・・・・・あなたがイガラムを!!!」 「どうでもいいけど何でお前はオレ達の船にのってんだ!!誰だお前!!!」 見知った女に蒼白し唇を噛みしめるビビを尻目にルフィは女に問うが女は全く意に介さない。 「何であんたがこんな所にいるの!!?ミス・オールサンデー!!!」 「今度は何!?Mr.何番のパートナーなの!!?」 「Mr.0の・・・ボスのパートナーよ・・・!!!」 「ク、クロコダイルの!!?」 B.Wのコードネームらしき名前に訊ねビビの言葉に恐怖からナミは己の身を抱き込む。 「悪ィやつか?」 「実際にボスの正体を知っていたのはこの女だけだから私達はこいつを尾行することで、ボスの正体を知った・・・!!!」 「正確に言えば、私が尾行させてあげたの・・・」 「何だ、いい奴じゃん」 「そんなこと知ってたわよ!!そして私達が正体を知ったことを社長に告げたのもあんたでしょ!!?」 「正解・・・」 「何だ、悪ィ奴だな!!」 《余裕ですねルフィ・・・》 「おめーは少し黙ってろ!」 ビビとミス・オールサンデーのやり取りに一言挟むルフィにリリィとゾロは呆れる。 「あんたの目的は一体何なの!!?」 「さァね・・・あなた達が真剣だったから・・・つい協力しちゃったのよ・・・本気でB・Wを敵に回して国を救おうとしている王女様が・・・あまりにバカバカしくてね・・・・・・!!!」 「・・・・・・!!ナメんじゃないわよ!!!」 馬鹿にしたように一笑するミス・オールサンデーにビビの悲痛な叫びと共に一味全員武器を構え其れをミス・オールサンデーに向ける。 「おい、サンジ・・・お前!意味わかってやってんのか!?」 「いや、何となく・・・愛しのミス・ウェンズデーの身の危険かと・・・!」 サンジとウソップに銃とパチンコを至近距離で向けられたミス・オールサンデーは表情を消す。 「そういう物騒なもの私に向けないでくれる?」 其の言葉を共にサンジとウソップの体は宙を舞い甲板へと落とされた。 「何だ!!!」 「!」 《っ!?》 「・・・・・・悪魔の・・・・・・」 「おおおっ!!?」 突然の事態に驚愕の声が上がりゾロ、ナミ、リリィの武器も突然弾かれた様に落とされた。 「悪魔の実か!!?」 「なに!?何の能力なの・・・・・・!!?」 「うおっよく見りゃキレーなお姉さんじゃねェかっ!!」 焦りの拳を握るゾロとナミを他所に起き上がり目の色を変えるサンジ。 「フフフッ・・・そうアセらないでよ・・・私は別に何の指令も受けてないわあなた達と戦う理由はない・・・」 「!?」 「あなたが噂の麦わらの船長ね・・・モンキー・D・ルフィ」 「お前帽子を返せケンカ売ってんじゃねェかコノヤロー!!!」 「俺はお前を敵と認めたぞ!出てけコノヤロー!!」 麦わら帽子が突如ルフィの頭から離れミス・オールサンデーの元へと渡りルフィは怒りを露わにする後ろでウソップも騒ぐ。 「不運ね・・・B.Wに命を狙われる王女を拾ったあなた達も・・・こんな少数海賊に護衛される王女も・・・・・・!!・・・そして何よりの不運はあなた達のログポースが示す進路・・・!!!」 「っ!?」 ルフィの帽子を自分の帽子の上からかぶるミス・オールサンデーの言葉にナミは思わずログポースに目を向ける。 「その先にある土地な名はリトルガーデンあなた達はおそらく私達が手を下さなくても・・・アラバスタへもたどり着けず・・・!!そしてクロコダイルの姿を見ることすらなく全滅するわ・・・」 「するかアホーッ!!!帽子返せ!!!コノヤロー!!」 「このヤローが!アホー!!」 「ガキかお前・・・」 帽子の事しか考えてないルフィに静かに笑うミス・オールサンデー。 「遠吠えは結構・・・虚勢をはることなんて誰にでもできるわ・・・困難を知ってつっこんで行くのもバカな話」 帽子と共に放られた物をビビは咄嗟に受け取り、帽子はルフィの頭へと戻る。 「!エターナルポース・・・」 「それで困難を飛び越えられるわ・・・その指針がしめすのはアラバスタの一つ手前の何もない島・・・ウチの社員も知らない航路だから追手も来ない・・・」 「なに?あいついい奴なの・・・・・・!?」 ナミは困惑しミス・オールサンデーの顔を窺うが其の妖艶な笑みは崩れない。 「な、何でこんな物を・・・・・・!!」 「どうせ罠だろ」 言葉荒く問うビビ、静かに睨むゾロにミス・オールサンデーは笑みを見せるばかり。 「どうかしら」 「(どうしよう・・・あんな女からこんな物受け取りたくない!でも、この船に乗せてもらう以上、安全な航路を選んだ方が・・・!!)」 「そんなのどっちだってイイ・・・!!」 迷うビビの手に握られたエターナルポースに手を添えルフィは其れを握り潰す。 「ぁ・・・!」 「ひぃ!!?」 粉々になった其れにナミはルフィの顔にサンダルの踵で蹴り飛ばす。 「アホかお前ーっ!!せっかく楽に行ける航路を教えてくれたんじゃないっ!!!あの女がいい奴だったらどうすんのよーっ!!!」 「この船野進路をお前が決めるなよ!!!!」 「そう残念」 倒れたまま強い眼差しを向けられミス・オールサンデーは船の襟へと歩み出す。 「もうっ!!」 「あいつはちくわのおっさんを爆破したからおれはきらいだ!!」 「!」 ルフィの言葉にビビはルフィを見返し拳を握る。 「・・・私は威勢のいい奴はキライじゃないわ・・・生きてたらまた逢いましょう」 「イヤ!」 まさに裏と表を体現したような二人の遣り取り、そしてミス・オールサンデーはゴーイーングメリー号から横に付いていた巨大な亀に乗り移った。 「なんだありゃー・・・」 「まさか、海王類!!?いや・・・」 「「「「うおぉぉ!!カメだぁぁ!!?」」」」 「でけーカメだなぁ」 《ちょっと乗ってみたい気もします!》 「呑気ねアンタ・・・」 興奮する一味とは反対に、脱力し座り込んだビビ。 「あの女・・・!!いったい何を考えているのかさっぱりわからない」 「だったら考えるだけムダね!」 「そういう奴ならこの船にもいるからな」 「おい、状況説明しろよ!ワケわかんねーよ!!!」 一難去った事で頭を整理する余裕が出来たのかウソップがゾロ達に説明を求める。 「おぉミス・ウェンズデー!もしかして仲間に!?」 「だから!状況を説明――・・・うおぉぉ!?ダチョウが乗ってるぞ!!?」 「クエェ!!」 「おい、どうなってんだぁ・・・」 鼻の下を伸ばすサンジを制そうとすると巨大なカルガモに肩を揺らすウソップ。 「おい、中は食糧か?」 「クエェェ!!」 「状況を説明しろぉぉ!!!」 嘆くウソップを尻目にリリィはナミに声を掛ける。 《ナミ》 「ん?」 《私もティティと変わります、状況を説明してあげてください》 「え?そんなあっさり代われるの?」 《たぶん、動けないティティが無意識に私を呼んだんだと思います》 「ティティが?」 《はい、私とティティは繋がっていますから、何かあったらまた呼んでくださいね!》 笑みを浮かべたリリィが崩れるのを慌てて支えるナミ。 『ん?あれ、ナミ?もう朝?』 「(ホントに戻った)」 『痛っ!なにすんの!?』 「あんたが寝てる間に色々あったの説明するからしっかり聞いてなさい!」 『?』 ティティは理不尽な暴力だと訴え痛む箇所を押さえナミとビビから語られる話に耳を傾けた。 「なるほどね・・・そりゃあ、惜しい事をしたが・・・まだ俺にも活躍の場は残ってるわけだ・・・!大丈夫、この眠れる騎士が目覚めたからにはキミの安全は保障する・・・」 「はぁー・・・寝ててよかったぁぁあ!!」 『すごい!リリィ!!私の体使えたんだね!!?』 ビビに笑みを向けるサンジ、危機的状況に居合わせなかった事に安堵するウソップ、知られざる事実に目を輝かせるティティ。 「ナミさんちょっとジェラシー?」 「別に」 サンジの問いかけに素っ気なく返すナミ、ビビは暗い表情で口を開き皆の視線を集める。 「・・・・・・私本当にこの船にのっていいのかしら・・・みんなに迷惑を・・・」 「なーに言ってんの・・・あんたのせいで私達の顔はもうわれちゃってんのよ!!メーワクかけたくなかったら初めからそうしてよ!!」 「う、ごめんなさ」 ナミに額を小突かれながら謝罪するビビ。 「そうでしょ?ルフィ」 「うぉーっ!!腹減った!!サンジ、メシー!!!」 「どうでもいいのかしら・・・」 我が道を行く船長に全員息を吐く。 「とりあえず次の行先が決まったワケだ!」 「リトルガーデン・・・か」 『小人かな?小人の国なのかな!!?』 「んなもん居るかよ!!な、なぁ大丈夫なのかそこ!?」 「知るか!行くぜヤロー共!!!」 「「「『おぉう!』」」」 「ぉ、おう?」 麦わらの一味の船は進む、次の目的地はリトルガーデン。 [*前へ] |